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都会のセミ、なぜ夜に鳴くの? 異変…鳴くのはオスだけ
午後10時。なんだかおかしい。大阪市内を歩いていると聞こえてくる。耳を澄まして、よーく聞くと、確かにセミの鳴き声だ。朝の日差しとセミの鳴き声は、夏の風景なのに、それに異変が起きているのかも。セミが夜に鳴く−。なぜだろう。(中井美樹)
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シャワシャワ、シャワシャワ…。耳が痛いほど、セミの声が響く。午前8時半、大阪市東住吉区の長居公園。
「今ぐらいが、一番うるさい時間帯」です。“セミ博士”として子供に人気の大阪自然史博物館の初宿成彦学芸員(39)が、セミの声の大きさを測る騒音計の数字をみせてくれた。数字は、89・3デジベル。例えるなら「騒々しい工場の中」だそうだ。
鳴くのはオスだけ。メスを呼んで交尾するためで、ティンバル(ラテン音楽で使用する打楽器)と呼ばれる膜を振動させ音を発声し、空洞になっている腹部で共鳴させて大きな音になっている。
大阪の市街地には、主に4種類のセミがいるが圧倒的に多いのはクマゼミ。クマゼミが鳴く時間帯は、午前5時から10時ぐらい。「確かに最近、夜にセミが鳴いてるという問い合わせが増えていますね。本来の生態から夜鳴くことはないので、何かが影響しているのは確かなんですが」と初宿さん。
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「私も気になっていたんです」
動物生態学が専門の大阪市立大理学部の沼田英治教授(52)も指摘する。この夏、沼田さんは、夜の鳴き声に注意しながら歩き回っていると、なんとなく鳴いている日の共通点が分かってきたそうだ。
一つは気温が高く暑い晩、もう一つは電灯などがある明るい場所。「きちんと調べないと分かりませんが、最近のヒートアイランド、温暖化などといった温度の上昇と、都市部が明るくなってきていることが影響していることは確かでしょう」と話す。
実際、都会の夜は確実に明るくなっている。防犯の目的で道路や公園には街灯が増え、夜遅くまで営業する店や、高層マンションなども増えている。
大阪市では交通安全と防犯を目的に、平成15年度から市内の生活道路に照明灯を増やす事業を続けている。これまで、60メートル間隔だった照明灯を、30メートル間隔にして道路の明るさをアップ。15年から毎年2400灯を増設。公園の照明灯も市は14年から「安心あかり事業」を実施し、年間200〜300灯を増設。担当部署によると、市民からの要望で設置する照明灯なども含め、公園の照明灯は年間約500灯ずつ増えているという。
また、共有部分の灯りを夜に点灯しているマンション。その棟数も、不動産調査会社の東京カンテイの調べでは、大阪府内で18年までの過去10年間に5270棟増えている(分譲マンションのみ)。
温度も上昇している。昨年3月、気象庁が発表した都心部のヒートアイランド現象に関する報告では、大阪は、18年までの過去50年間で8月の平均気温が1・17度上昇。また、最低気温が25度以上の熱帯夜の日数は、10年間で6・4日増加している。
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深夜の大阪市中央区の高津宮の前の公園。暗くてセミの姿が見えないが1匹や2匹ではなく日中のような大合唱がサクラの木の上から降ってくる。公園内には強い光を放つ電灯があり、隣には夜遅くまで営業しているレストランもある。
沼田教授によると、どんな生物にも1日の行動を決める時計遺伝子、つまり概日時計があり、自分に適した時間に活動している。人間も時差のある旅行をすると、体が疲れるのは時計と合わない活動をしたせいだ。
「おそらくセミにも概日時計はある。なのに夜鳴くことは、人工的な環境がそれを狂わせているのでしょう。おそらくオスのセミがいくら夜鳴いても、メスはこの時間帯には飛んでこない。相当なエネルギーを無駄に使っていることになる。セミもきっと疲れているでしょうね」と話していた。
セミが夜に鳴く風景は、少し気味が悪い。でも、本当にこれはセミだけの問題なのだろうか。きっと私たち人間にも、今は気づかないけれど何か体内で変化が起き始めているのかもしれない。