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「京都国際マンガミュージアム」 不思議な力集める場所
烏丸御池の北西に位置する「京都国際マンガミュージアム」は、京都市と京都精華大学の共同事業として平成18年11月に開館。現在までの来館者は27万人を超える。客層も大変幅広く、普段からマンガを読んでいる若者だけでなく、親子連れやご年配の方々も多い。海外からの来館者も目立っており、全体の15%以上に達する月もあるほど、文字通り「国際」を冠したミュージアムとして京都の新しい名所となりつつある。
館内では各種の展示・講演会、紙芝居・ワークショップが行われるほか、研究閲覧室や子ども図書館など、見どころはさまざまで、イベントが集中する土日は特ににぎわっている。
中でもインパクトがあるのが「マンガの壁」で、廊下の壁を利用して約5万冊のマンガが開架されており、天気の良い日には外に持ち出して、校庭の芝生に寝転がってマンガを読みふける人たちの姿が見られる。マンガファンにはまるで天国のような風景だ。
周知の通り、一昔前まで「勉強の敵」と言われていたマンガは、今や「クールジャパン」の代表格として、アニメやゲームとともに国際的注目を集めている。その影響もあって、マンガを扱う大学の急増が象徴するように、国内での社会的評価も高まっている。
ただ、だからといって、それだけで館内がにぎわっているわけではない。「マンガミュージアム」という場所・コンセプトには、あるいは「マンガ」という表現・メディアには、もっと複雑で面白い、不思議なパワーが備わっているようなのである。
そんなマンガのパワーや可能性を調査・考察する機関として、館には「国際マンガ研究センター」を設置している。そこでマンガの歴史や表現的特徴を調べたり、マンガを教育や産業に活用するモデルを構築したりするのだが、その成果は展示や講演を通じて公開される。
同時に、会話やアンケートによって、来館者のマンガに対する声や考え方を積極的に集めている。世界にたった一つしかない芸術でも特定の地域に根差した文化でもない、複製印刷と大量消費を前提としたマンガの研究には、読者一人一人の感想や記憶も大切な情報になるからだ。
館にはマンガの寄贈が絶えないのだが、それが蔵書の体系性を高めているというのも、マンガミュージアムならではのことだろう。
本連載では、こうした「来館者協力型・市民参加型」のマンガミュージアムという場所から、ミュージアムやマンガ、さらには京都の街や人にかかわる、さまざまな話題を発信していきたい。
欧米のマンガ文化の研究者や、産業振興に生かしたいというアジアからの視察も相次ぎ、いまや京都の「顔」になりつつある京都国際マンガミュージアム。そのスタッフがマンガの魅力をさまざまな角度からつづる。
【プロフィル】吉村和真(よしむら・かずま) 昭和46年生まれ。京都精華大学マンガ学部准教授。国際マンガ研究センター研究統括室長。専門は思想史・マンガ研究。主著に「差別と向き合うマンガたち」(臨川書店)、「『はだしのゲン』がいた風景−マンガ・戦争・記憶−」(梓出版社)など。