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【この人あり】国連ボランティア計画終身名誉大使・中田武仁(11)
■人、国、世界を変えられる
「人間は豊かになると、人の助けを借りなくても生きていける。すると周囲に無関心になり、人の気持ちも、自分の気持ちすらも分からなくなる」
中田は、そんな人間が増えた結果が、どこか覇気のない日本の現状だと憂えている。だが、人の気持ちを理解しようとするボランティア活動がもっと盛んになれば、その現状を変えられるのではないかとも主張する。
ボランティアとは、自分の持つベストのものを誰かに提供し、自分自身の素晴らしさに気づくこと。それは、決して難しいことではない。
「日本人の多くは、自分が何もできない『みにくいアヒルの子』だと思っている。そうではないんです。本当はみんな白鳥。ボランティアはそのことに気付かせてくれる」
《その一つの例が、平成7年1月17日に発生した阪神大震災だった。約130万人にのぼるボランティアが被災地に集まったこの年は、日本の「ボランティア元年」となった》
震災当日、中田は大阪から船や電車を乗り継いで神戸に入った。約4カ月間、全国から届けられた物資の仕分けなどに走り回った中田は、何かに突き動かされるようにやってきた大勢のボランティアを見た。なかには「厚仁さんを思いだすといてもたってもいられなかった」と語りかけてきた若者もいる。
1人の大工の青年が印象に残っている。はるばる秋田から重い木材や道具を持ち込み「家を直すことくらいなら自分にもできる」と語っていた。青年がどれだけの家の修理にかかわったかは分からない。しかし「今まさに自分が必要とされている」と感じたことは間違いないだろう。
震災翌年の9月、中田は住み慣れた大阪を離れ、生活の拠点を神戸に移した。復興を見届けるとともに、ボランティアのあり方も考えたいという思いがあったからだ。
「被災者は、人に優しくされることで人に優しくなれた。また被災者の役に立とうとやってきたボランティアは逆に、被災者から多くのことを学んだはず」
ボランティアの経験を通して得ることは大きい。震災のときのように、いま目の前にあるさまざまな問題を「私たち」の問題と感じて行動する人が増えれば、日本はもっとよい国になれるはずだ。
ボランティアは人を変え、国を変え、世界を変えることができる。震災を経験した神戸だからこそ、その発信地になってほしい。市民の一人として、中田はそう願っている。
(敬称略)