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【この人あり】国のかたちを訴え続ける 前兵庫県知事・貝原俊民(10)
「厚い壁に阻まれて苦労されているようだが、橋下さんには期待している。若き志士がリーダーシップを持てば日本が変わる」
今年1月の大阪府知事選で初当選した橋下徹を、貝原は先輩知事として、混迷を抜け出すための「次代の象徴」と見守っている。
いま社会は、明治維新以来の構造転換期にある。しかし地方は中央依存の意識から抜け出せない。貝原が精力を注いだ地方分権の流れは進まず、東京中心、官僚中心の「全国一律」構造に逆行しているようにも見える。それを実感するとき、貝原は、6年間走り続けた阪神・淡路大震災の被災地復興に思いを巡らせる。
「震災は、国民の生命・財産を守るのが政府の第一義的使命だと再認識させたのではないか」
その一方で、大災害では中央からの指示待ちではなく、被災者や、現場の自治体が主体的、弾力的に対応するほうが結果的に多くの命を救うことになると、貝原は確信している。
《阪神・淡路大震災について、京都大教授で、人と防災未来センター長でもある河田惠昭は、消防団を含む公的機関によって救助されたのは全体の5%足らずで、多くは被災者本人や家族、隣人の力で救助されたと分析している》
はからずも震災が示した「自助、共助」という社会のあり方だ。それを作家の故司馬遼太郎は震災直後、地元タウン誌に寄稿して「神戸に自立した市民を感じた」とつづり、被災地を訪問したクレッソン元仏首相は「被災者の行動には感動した」と語った。
貝原は震災直前の6年12月末、生まれ育った佐賀県の実家を火災で失い、正月早々には妹を亡くしている。一瞬にして家族や友人を失い、思い出を奪われた被災者の深い悲しみと絶望感…。貝原は震災後、被災者と悲しみを共有していたとも感じている。
地方自治をライフワークとし、震災で示された自助、共助という社会を目指したのは、「私人」としての悲しみと、知事としての悔恨を乗り越えようとする、貝原の「叫び」だったのかもしれない。
「行財政構造改革によって地方の災害対応能力はさらに低下しつつある」。だからこそ震災1カ月後から訴え続けてきた広域の専門支援組織の実現が急務だ。
貝原は今も大学生を対象にした講義などで訴え続ける。
「“平和力”の構築に向けたリーダーシップを取れるのは日本しかない」
震災の教訓に学ぶ「この国のかたち」を訴える活動に終わりはない。
(敬称略)
(この項は竹室輝之が担当しました)