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【この人あり】自衛隊要請遅きにあらず 前兵庫県知事 貝原俊民さん

2008.4.3 04:52

 「神戸に大地震はない」。阪神・淡路大震災の前、そんな「俗説」があった。だからだろう。地震に対する備えについて、貝原は「十分でなかった。(遅れた)初動体制が県民の期待を裏切ったことを深く反省している」と振り返る。

 震災が発生した平成7年で、県政を担って9年目。貝原は県内各地の事情や県政業務に精通し、幹部職員の資質も熟知していた。慣れない災害対策に誰を担当させるかも、すぐに判断できた。しかし貝原は自身が「非常事態のリーダー」の役割が十分に果たせたとは思っていない。とくに当時の貝原を悩ませたのは、自衛隊への派遣要請が遅く、それが貝原の判断ミスによる、という批判だった。

 自衛隊への派遣要請は、災害状況や派遣理由、期間、人員、活動内容などを明らかにするよう自衛隊法施行令で定められ、出動準備が整った段階で知事の正式派遣要請となる。「大変だ、すぐ来てくれ」と言っても、即座に出動できるわけではない。

 それらの実情を、貝原が説明し反論すれば、責任逃れの言い訳と受け取られるのは明らかだった。遺族や被災者の心情を考えると、責任者として絶対にとってはならない態度だった。

 震災直後、自衛隊と兵庫県は互いの努力もむなしく、通信途絶の状況で結果的には2回しか交信できていない。午前10時ごろ、2回目の交信で、被害状況不明のまま派遣を要請した。

 自衛隊の災害救援出動は本来任務ではない。「大規模地震対策特別措置法」が適用される東海地域などを除き、自衛隊の災害派遣は局地的な災害を想定してつくられていた。

 《同年11月に閣議決定された新防衛大綱で、今後の防衛力が果たすべき役割の3本柱の1つに「大規模災害等各種の事態への対応」が位置づけられ、最小限の法改正も行われた》

 当時、災害救援に必要な機材装備も不十分だったろう。だが、十分な機材もなく、ほとんど素手で活動する頼もしい自衛隊員の姿に涙し、感謝する被災者も少なくなかった。

 平成7年9月23日付の産経新聞で、ノンフィクション作家の野田正彰が「知事の派遣要請が午前10時まで出なかったため出動が遅れたといわれたが、遅れた理由は別のところにあった」と書いている。

 それは、貝原が当時感じた「もどかしさ」に通じるものだった。

(敬称略)

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