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黒木亮さん初の自伝的小説 箱根で走る 思いを綴る
『トップ・レフト』や『エネルギー』など経済小説を多く手がける作家、黒木亮(りょう)さん(51)が新作『冬の喝采(かっさい)』(講談社)で箱根駅伝を描いた。本作は箱根駅伝にランナーとして2回出場した経歴を持つ黒木さん初の自伝的小説となる。黒木さんに箱根への熱い思いを聞いた。(古川有希)
「これを書くために私は作家になった」
作家デビューから8年。本作に対する思い入れは相当深いようだ。
「脂がのってきた作家としての集大成の作品」とも。
中学生時代から大学卒業まで詳細につづってきた練習日誌がある。120ページのノート8冊に、黒木さんの青春が凝縮されている。中学生で本格的に走り始め、高校総体にも出場した。けがでいったん競技から離れたが、1年遅れで早稲田大学競走部の門をたたいた。中村清監督の下、厳しい練習に明け暮れた。
元マラソン選手の瀬古利彦さんとチームメートだった黒木さん。冒頭は、昭和54年の大会で2区の瀬古さんから1位でたすきを受け取り、1位を保ったまま4区につなげるシーンだ。
「白バイの先に20人ほどのカメラマンを乗せた報道車が目に飛び込んできて、衝撃を受けました。この光景は箱根でトップを走る者だけが目にできるんだと」
翌年も8区を任され、早大の総合3位に貢献した。
本作では、名将と言われた中村監督とのエピソードが披露されている。ときに常識外れな監督の指導方針に反発し、退部を申し出たこともあったという。
「2回目の箱根で、伴走車の中村監督が『わしはお前に期待している』と言ってくれたのは今も忘れられない。監督から唯一かけられたほめ言葉でした」
いまは走る機会がないというが、「やはり箱根で走ることはランナーにとって別格」と述懐する。「駅伝は普通の団体競技以上に団体意識が強い。そして1人強い選手がいるとみんな強くなる。自分が箱根を走れたのはすごい巡り合わせで奇跡だと思う」
自身の出生にまつわる意外なエピローグが用意されている。


