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【記者ノート】ラグビー三洋電機WTB・北川智規 成長促した唯一の黒星
3月16日、東京・国立競技場。ラグビー日本選手権決勝で、三洋電機はサントリーを40−18で退け、念願の初優勝を果たした。WTB北川智規は、トップリーグで2年連続となるトライ王を獲得するなど、シーズンを通して活躍したが、その北川を成長させたのは、昨シーズン唯一の黒星だった。
2007年度シーズンのトップリーグで、史上初のリーグ戦全勝を果たした三洋電機だが、上位4チームによるマイクロソフト杯決勝(2月24日)で、サントリーに敗れた。3点リードで迎えた後半20分、相手ボールのラインアウトから一瞬のすきを突かれ、WTB小野沢宏時に逆転のトライを許した。
ケガで練習に参加していなかった選手のミスから防御に穴が開いたのが原因だったが、「ひと言声をかければよかった。お互いに分かっていても、口に出すことで意識を徹底できる」。コミュニケーションの重要性を再認識した。
そして、悔しい敗戦。FWでがっちりとボールを保持し、スローテンポで時間をつぶしたサントリーの戦いぶりに、試合中は「見ている人が全然面白くないラグビー。(そのようなスタイルを批判していたサントリー監督の)清宮(克幸)さんは言っていることと、やっていることが違う」と憤りも感じた。
だが、試合翌日、「勝ちたいではなく、勝つという気持ちでやっていた」との相手選手のコメントを目にし、がくぜんとした。「僕自身も『優勝したい』という言葉を使ってしまっていたし、優勝できるやろというあいまいな気持ちでいた」。清宮監督の戦術も、勝利への執念の表れとして、素直に受け入れた。
その思いをチームで共有した結果が、日本選手権決勝での圧勝だったが、北川の目はさらに先を見据えていた。
カミソリのような切れ味で相手防御網を引き裂くプレーは、日本ラグビーの正当なWTBのスタイルを引き継ぐ。だが、大型選手を好む日本代表のジョン・カーワン・ヘッドコーチの意向もあり、代表でレギュラーの座をつかんだことはない。
国内最高峰リーグのトライ王が置かれている状況は、1995年の国際ラグビー機構(IRB)によるプロ化解禁以降、ラグビー先進国で肉体と防御システムの強化が進む中、取り残されつつある日本ラグビー界を象徴しているようにも思える。
さらに強く−。北川はシーズン終了直後、右肩の手術に踏み切った。脱臼癖を矯正するためだった。手術の影響で、今季は調整が遅れ、代表からも外れている。
それでもここまでトップリーグで10トライを挙げ、同僚のダニエル・ヒーナンと並び、トライランキングの首位。「まずはプレーでしっかり見せなきゃだめ。(代表に)呼んでみようと思われるようにしたい」。静かに闘志を燃やしている。
だが、まず頭にあるのはチームの勝利。ラグビーシーズンはこれからが本番。三洋電機はパナソニックによる子会社化が進み、今後への不安がないわけではない。そんなもやもやを吹き飛ばす走りで、初のリーグ制覇、そして日本選手権2連覇に挑む。(橋本謙太郎)
=おわり