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上州リポート 前工跡地有害物質の浄化費負担で県と市対立
群馬県立前橋工業高校跡地(前橋市岩神町)の土壌から環境基準を大幅に上回る有害物質が検出された問題で、約20億円と試算される有害物質の浄化費用の負担をめぐり、県と市の対立が続いている。県から跡地を取得した市は一定の費用負担を要求。これに対し、県は契約時の合意書を根拠に「支払う理由がない」として応じない構えを崩していない。問題が表面化してから2カ月たった今も、解決の糸口は見えず、不安を抱える周辺住民の気持ちは置き去りにされたままだ。(大竹直樹)
■環境基準大幅に上回る
市は平成18年10月18日、県から土地交換で跡地を取得。有害物質は19年8月から今年3月末にかけて行われた調査で見つかった。
土壌汚染は、同校跡地約2・8ヘクタールのうち、全体の約3分の2に当たる約1・8ヘクタールの土中(地表から30〜50センチ)で、最大で環境基準を約360倍上回る鉛のほか、約20倍上回る水銀、6・8倍のヒ素、約3倍のフッ素、2・6倍の六価クロムの計5種類が検出された。
県教委などによると、戦後に建てられた同校には化学科があり、検出された有害物質を使用していたことが確認されている。
ただ、通常の授業で使用する量をはるかに上回るとされる有害物質が検出されていることから、戦前に同跡地にあった紡績会社や旧中島飛行機の工場が汚染源の可能性も残っている。
■見解の食い違い
市と県の対立が表面化したのは5月12日。大沢正明知事は記者会見で、「市の責任で(有害物質の浄化を)行うことが合意書で取り交わされている」と述べ、費用負担に否定的な考えを強調した。
市が県から跡地を取得した際に取り交わされた合意書には、市が有害物質の調査、浄化費用を全額負担することに同意し、契約後に有害物質が発見されるなどの欠陥が生じた場合、「瑕疵(かし)担保」に基づく損害賠償もできないことが明記されている。法的には、県が費用を負担する根拠はない。これに対し、市は「錯誤に基づく契約だった」(真塩浩一財務部長)と主張している。
産経新聞社が入手した、市と県の土地交換協議に関する内部資料によると、土地交換契約2カ月前の18年8月11日、県管財課の担当者が市側に、「(土壌汚染は)大量にはないだろう」と話したことが記録されている。大量の有害物質検出について、県も想定していなかったことが分かる。
■住民置き去り
もっとも、県はこれまで、費用負担に応じる構えを一切示していない。5月22日には、奈良三郎県管財課長らが記者会見を開き、市が行った校舎解体工事の方法に問題があり、汚染が敷地内全域に広がったとする見解を発表した。
一方、市は「そんなことはあり得ない。契約の無効も考えられる」(真塩財務部長)、「知らん顔では済まされない」(管財課)と反発。双方がともに批判し合う泥沼の様相を呈している。
問題がこじれた背景に、2月に行われた市長選をめぐる大沢知事と高木政夫市長のしこりを指摘する向きもある。一方、市が不利な条件で合意書を交わしたことが原因として、高木市長の責任を追及する動きも出ている。
市は、暫定措置として、汚染土壌の上にアスファルト舗装を施し、駐車場として活用する方針だ。ただ、周辺住民は不安を隠せない。
跡地の近所に住む主婦(57)は「周辺にどんな影響があるのか分からないだけに心配。できれば早く有害物質を除去してほしい」と訴える。
住民の不安を解消するため、市と県は一日も早く、解決に向けた協議のテーブルに着くべきだろう。