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広島の保険金目的放火殺人 きょう判決 自白調書の信用性焦点
広島市西区で平成13年1月、母親=当時(53)=を殺害した後、母親方に放火し預けていた8歳と6歳の自分の娘2人を焼死させたなどとして殺人と現住建造物等放火などの罪に問われた元会社員の中村国治被告(37)に対する判決が28日、広島地裁(細田啓介裁判長)で言い渡される。検察側の死刑求刑に対し、被告側は起訴事実を全面的に否認し無罪を主張。直接証拠がない事件で、捜査段階で犯行を認めた被告の自白調書の信用性を裁判所がどう評価するかが焦点となる。(中・四国総局 清宮真一)
■変遷する供述
火災現場で見つかった母親の遺体を司法解剖した結果、肺にすすが入っていないことなどから、県警では当初から、母親が殺害されてから火をつけられたとみて放火殺人事件として捜査していた。
事件後に3人の死亡保険金などを受け取っていた中村被告に対しては約1カ月間にわたり、任意での事情聴取を続けたが、逮捕には至らなかった。
しかし、発生から約5年余りが経過した昨年5月、別の詐欺事件で元妻とともに逮捕された中村被告が、母親の殺害と放火などへの関与を供述。広島地裁で開かれた詐欺事件の拘置理由開示公判では「極刑を覚悟で自白した」と供述した。
このため、県警は昨年6月、殺人容疑などで中村被告を再逮捕。当初犯行を認める上申書を提出したうえで、自白調書に署名していた。
しかし、今年6月1日に地裁で開かれた初公判では一転、「身に覚えがない」と全面否認。9月の公判で行われた最終意見陳述では「疑われることなく、笑って過ごしている真犯人がいる。私は無実」と、ほかに犯人がいることを主張した。
■状況証拠
事件から5年余り経たのちの逮捕で、これまでの公判では中村被告の犯行を裏付ける直接証拠がなく、自白調書の任意性と信用性が争われた。
犯行を認める上申書を提出したことについて、中村被告は被告人質問で「捜査員から『とにかくお前が犯人じゃ』と決めつけられた」と供述。
さらに、別の詐欺事件でともに逮捕された元妻について「取り調べで捜査員から元妻を再逮捕できるともいわれた。元妻を家に帰してやりたかった。(上申書の作成が)裁判で不利なことは百も承知だった」と、取り調べの違法性を訴えた。
一方、検察側は状況証拠の積み重ねで、中村被告の犯行を裏付けようとした。論告では、母親が首を圧迫され窒息死したとみられる遺体の状況や、現場に灯油がまかれた痕跡があることに言及した。
そのうえで、事件直後の任意聴取でポリグラフ(うそ発見器)検査を拒否した態度や、放火殺人事件での再逮捕前に警察署で面会した親族が、被告から事件への関与を聞かされたという証言などを挙げた。
さらに中村被告の捜査段階の供述に基づき、母親方に侵入してから犯行に及ぶまでの経緯を詳述。「供述は体験した者でしか語りえない内容を豊富に含み迫真性のある」として、「自白の信用性に疑いをいれる余地はない」と主張している。
また、動機については中村被告が当時約500万円の借金を抱え、事件後に死亡保険金などを取得していることから「経済的に苦しい状態を脱し、元妻と不自由のない生活をしたいという独りよがりの思い」と指摘した。
■調書の証拠採用
一方、弁護側は最終弁論で、捜査段階の自白調書について「別の詐欺事件で起訴した後の拘置中に得られた違法収集証拠」と任意性と信用性を否定。調書の内容も、犯人しか知り得ない「秘密の暴露がなく、取調官とのやりとりで作成された」としている。
動機についても、中村被告が借金の返済に苦労していた事情を認めながら「重大犯罪を敢行するほどにまで追いつめられていたとはいえない」と反論。母親が加入していた生命保険などについては「存在を知らなかった」として、検察側の主張を否定した。
また、中村被告が事件当時、着ていたとする衣服から、油類反応が検出されなかった鑑定結果を証拠申請し、被告は現場にいなかったとしている。
こうした、検察、弁護側双方の主張に対して、地裁は自白調書を「任意性がある」として証拠採用する一方、弁護側が申請した被告の衣服の鑑定結果についても採用した。
否認から自白、再び否認へと供述を変遷させた中村被告。異例の経緯をたどった凶悪犯罪に対する地裁の判断が注目される。
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【用語解説】広島の保険金目的放火殺人事件
広島市西区で平成13年1月17日未明、飲食店経営の中村小夜子さん=当時(53)=方が全焼、焼け跡から小夜子さんと孫の彩華ちゃん=同(8)=、ありすちゃん=同(6)=が遺体で発見された。県警は昨年6月、小夜子さんの長男で、女児の父親の中村国治被告(37)が、小夜子さんを殺害した後、放火し娘2人も焼死させたなどとして、殺人と現住建造物等放火などの容疑で逮捕。さらに、3人の死亡保険金など計約7350万円を詐取したとして詐欺容疑でも追送検、地検がそれぞれの罪で起訴した。