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写真映画「ヤーチャイカ」 山梨市出身の詩人、覚和歌子さんら監督

2008.8.30 02:58

 山梨県山梨市出身の詩人、覚(かく)和歌子さんと現代を代表する詩人、谷川俊太郎さんが共同監督した史上初の長編の写真映画「ヤーチャイカ」。長野県川上村と山梨県北杜市で撮影されたこの作品は、70分の物語を1000枚の写真で紡いだ。静止画でつないだこの作品は、観客がそこに映し出された役者の表情や風景に思いを巡らし、それぞれの想像力で物語を完成させる。9月に山梨県立科学館(甲府市)で上映されるほか、今冬には新潟県や長野県での上映も予定されている。(油原聡子)

 「ヤーチャイカ(私はカモメ)」。人類初の女性宇宙飛行士、旧ソ連のテレシコワが宇宙船から地球と交信したときの最初の言葉だ。これをもとに覚さんが創作した詩を原作に出来上がったのが写真映画ヤーチャイカだ。「写真と写真の間は詩の行間に相当する。受け手が自分の内面と見つめあう時間をつくってもらえれば」と覚さん。

 物語は、恋人の死をきっかけに東京から離れたある村に移住し、小さな天文台で働く女性、新菜と都会の生活に挫折して村にたどり着いた男、正午の出会いから始まる。心身に深い傷を負った2人が豊かな自然のなかで再生していく様子が淡々と描かれる。

 企画が動き出したのは平成18年春。製作会社パグポイントの社長、畠中基博さんが覚さんの作る物語詩にひかれ、写真映画の製作を提案したのがきっかけだ。写真家の希望で、原作に覚さんの物語詩ヤーチャイカが選ばれ、詩の朗読会などで共演していた谷川さんが監督に決まった。

 撮影した写真は1万枚。プリントアウトすると電話帳2冊分になったというが、使われたのはたった1000枚だ。谷川さんとの共同監督で、撮影は7割を谷川さんが、編集は7割を覚さんが請け負った。覚さんは「写真をどう組み合わせるか無限にある状態だった。写真映画だからといって抽象的な、実験的な映画にしたくなかった」と振り返る。

 この作品には、俳優のせりふは一切ない。あるのは音楽と覚さんのナレーションで紡がれる詩だけだ。1枚の写真が十数秒続くこともある。正午がなぜ村に来たのかに始まり、映画では具体的に語られないことは多い。「口を開けていれば大きなおさじにおいしいものがのせられてくる、というのではなく、受け手と作り手が正面から向かいあってイメージを受け渡す、いわば『イメージの食卓』のような表現がしたかった」と覚さんは説明する。物語の筋はあるが、語られない部分を補完するのは観客次第、見る人の数だけ物語ができていく。写真映画という表現方法について、共同監督の谷川さんは、「1点の写真と詩の1行が対応するような感じがあった。行間ならぬ“絵間”にムービーにはない奥行きがあるのではないかと思った」と詩との共通点を語る。

 物語で2人は八ケ岳の雄大な自然に包まれ、澄んだ星空と向き合い、生きる力を取り戻していく。自然は作品全体に宇宙とのつながりを感じさせる重要な要素だ。星空の美しさからロケ地に選ばれた川上村と北杜市。静止画となって映し出される自然にじっくり向き合うと、いつもと違った表情が見えてくる。覚さんは「映画のテーマである生命や宇宙を表現するのにふさわしい、自然のエネルギーに満ちている。この場所でなければ、作品は成り立たなかった。生まれ故郷で映画を作れたのも良かった」。

 山梨県立科学館での上映は、9月13、15日の午後5時半から。舞台あいさつあり。定員は各日150人。未就学児不可。前売り券は1000円でコンビニエンスストア・ローソン店内のLoppiで発売。当日券は1200円。問い合わせは同館(電)055・254・8159。

                   ◇

 ■監督・原作・脚本=覚和歌子 自作詩の朗読会を精力的に行う一方で作詞家としても活躍。SMAP、平原綾香らの作品を手がける。宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」の作詞でレコード大賞金賞受賞。

 ■監督・脚本=谷川俊太郎 現代を代表する詩人の一人。主な詩集は「二十億光年の孤独」「日々の地図」など。「マザーグースのうた」の翻訳や脚本、写真など様々な分野で活躍する。

 ▽企画・プロデューサー=畠中基博、中村誠▽写真=首藤幹夫▽音楽=丸尾めぐみ▽出演=香川照之、尾野真千子ほか。式ホームページはhttp://www.yah−chaika.com

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