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産科医不足で助産師注目、人材育成が課題に
全国で産科医が減り、分娩(ぶんべん)可能な病院が激減するなか、助産師外来など助産師を活用した対策が注目を集めている。ところが、過酷な勤務から、助産師も不足している状態だ。日本産婦人科医会の調査で、助産師充足率0%の診療所が44・4%と高知県と並んでワースト1位の山梨県では、この状況を打破しようと今秋、研究費を負担し、助産師の活用方法などを研究してもらう寄付講座を山梨大に開設する。(油原聡子)
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「助産師はもともとお産を扱える資格。本来の実力を発揮してもらえば、産科医の負担軽減にもつながるんです」。山梨県医務課の山下誠課長はこう話す。産科医が1人前になるには10年ほどかかるというが、助産師は大学で学ぶか看護師資格を持つ人が養成学校で1年間学べばよいので育成も早い。健診や保健指導、正常分娩を助産師が扱い、異常分娩を医師が診るよう役割分担できれば、お互いの負担を軽減できるというわけだ。
寄付講座では、助産師外来や病院内で助産師が中心となって分娩介助する院内助産所開設のための課題や研修、医師との役割分担などについて研究してもらう予定だ。総務省によると国立大学法人の寄付講座で、産科医療に特化したものは全国でも初めてという。
県医務課によると、県内で看護業務に就いている助産師は平成18年末で約230人。そのうち産科以外で看護師として働いているのが65人だ。山梨大などによると、1人の助産師が研修をしながら勤務に余裕を持って扱えるお産は年間30人という。県内では年間7500人ほどお産があり、不足している状況だ。
ところが、県内の養成機関は県立大と山梨大医学部だけ。助産師課程を希望する学生は多いが定員は計15人程度と少なく、資格を取得しても県外の病院に就職してしまう学生も多い。ある助産師は「助産師の少ない地方の病院だと、新人がいきなり1人でお産を任せられるなど勤務が過酷。勤務態勢の整った大都市の病院で学びながら働きたいという学生も多い」と明かす。養成数が少ない上に、過酷な勤務状況が追い打ちをかけるのだ。山梨大医学部看護学科の遠藤俊子教授は「養成するだけではだめ。まとめて配置して交代勤務できるようにするなど働きやすい環境を整える必要がある」と指摘する。
助産師の資格を取得できるのは女性だけのため、結婚・出産を機にやめたり、フルタイムで働けずに分娩から離れ、地域の保健指導に活躍の場を移すことも多い。しかし、日本助産師会山梨県支部の榊原まゆみ支部長は「分娩にかかわりたいと思っている助産師は多い」と指摘する。県の意向調査でも、「助産師外来は、助産師の専門性が発揮できる場」などの声が目立ち、活躍の場が広がることへの期待は大きい。だが、助産師が独り立ちして活躍するには最新の知識を学んでスキルアップを図り、医師と信頼関係を築く必要がある。分娩の中心だった昔と違い、医師の補助的な役割を果たすことに慣れてしまった助産師も多いからだ。
昨年12月に開設した山梨大医学部付属病院の助産師外来も、医師と助産師の協力態勢の上に成り立っている。週1回、医師が正常と判断した妊婦の健診や保健指導を行っているが、医師がすぐ近くで診療しており、不安なことがあればすぐに相談できる。医師から超音波検査の技術も学んでいるといい、「医師の診察が必要ならすぐにお願いするし、先生方とのコミュニケーションが大事」と花輪ゆみ子産科病棟看護師長は話す。
同病院の平田修司分娩部長は「産科医の目標は子供が無事に生まれることだが、助産師は出産前から育児までかかわれる。産科医不足だから助産師で補うという発想ではなく、助産師本来の能力を発揮してもらうという考えです」。人材育成など課題は多いが、妊娠中から出産後まで母親に寄り添ったケアができる助産師への期待は大きい。
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■過去半世紀で半減
国内では1950年代までは、自宅で助産師の介助で出産するのが一般的だった。その後、正常な経過のお産でも医療機関で出産するのが主流になり、助産師数は半減。日本産婦人科医会の調査(平成18年)では、全国で6700人が不足しているという。また、日本助産師会によると、現在では助産師の8割近くが病院・診療所などの医療機関で勤務している。
「正常なお産は結果論。いつ異常が起こるかわからないのがお産」。産科医も助産師もこう口をそろえる。医療機関での出産が進んだ結果、出産10万人あたりの妊産婦死亡率は、1955年には178・8人だったのが、2006年は4・9人と激減、日本の周産期医療は世界でもトップクラスになった。しかし、「安全なお産」が常識になった結果か、患者から訴えられるリスクも高まり、産科医が減少。昼夜を問わない過酷な状況が拍車をかけ、産科医不足から分娩をやめる病院が全国で出てきた。山梨県内の分娩(ぶんべん)可能な施設は、1998年は14病院26診療所だったのが2008年4月の時点で7病院9診療所と、この10年で激減した。