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海なしの反動? 山梨県のすし店、人口比で全国最多 

2008.5.10 02:57

 都道府県で、人口10万人当たりのすし店数が最も多いのはどこでしょう?。この問いかけには、小樽など名だたるすしの名所を抱える北海道や、漁港が多い静岡県、日本海側の新潟県などが挙がるかもしれない。だが、正解は山梨県だ。海なし県の山梨は歴史的に魚が手に入りやすい環境にあったとはいえず、同様に海のない隣県の長野などはすし店がそれほど多くない。それなのに山梨ですし店が多いのはなぜ?(花岡文也)

 「海へのあこがれから、マグロを食べたいという県民性でしょう」。こう解説してくれたのは、山梨県鮨商生活衛生同業組合の芦沢紘理事長(69)だ。

 甲府市中央のすし店「舞鶴鮨」の経営者でもあり、開店した昭和34年から約50年間にわたってすしを握ってきた。県内のすし店では本マグロよりあっさりとしたキハダマグロが9割近く使われ、東京・築地と一部が静岡・清水港から運ばれており、「『とにかくマグロを』と求める客は多く、マグロの善しあしで店の評価が決まる」という。

 総務省の調査によると、甲府市の1世帯当たりのマグロ消費への支出額は、静岡市に次いで全国2位だ。この影響もあって、山梨県内にすし店は 370店もあり、人口10万人当たりでは41.8店。全国平均(25.3店)を大きく上回り、最も多い。

                  ◇

 「県内のお年寄りにとって、マグロは肉などよりもごちそうとなっている」。県史編纂(へんさん)事業に携わった県教委学術文化財課の平山優主査はこう話す。県内では「アワビの煮貝」が特産品となっているように、長く干物や塩漬けにした魚類が中心で、鮮魚は貴重だったという。

 マグロもしょうゆに漬け込んだ“漬け”で県内に運ばれる時代が続き、芦沢理事長は「昔は“漬け”からしょうゆを抜き、甘だれを塗って食べる習慣があり、すし店によっては名残があるところもある」と話す。

 地域資料のデジタル化に取り組み、県内の歴史に詳しい常徳寺(笛吹市)の住職、小林是綱氏によると、県民の“すし好き”の発端は江戸時代にさかのぼる。

 武田家滅亡後、徳川幕府が直接、支配する天領となった山梨では「徳川家発祥の愛知県から役人が派遣され、海のものに慣れた役人に食べさせようとマグロが山梨に運ばれたようだ」(小林氏)。役人と接した山梨の商人らも、高価な魚を味わうようになった。お年寄りにはこうした“高級感”の意識が残り、「祝い事の席で必ず、すしが食べられるようになった」という。

 また県内では、近隣住民や親戚が金を出し合って定期的会合を持つ「無尽」が盛んで、「すし店では煮物などの料理も多く出され、披露宴も行われる場所。高級感に加え安心感もある」(小林氏)と指摘する。

                  ◇

 県内のすし店は「無尽歓迎」と記された店も多く、県民の紹介がない観光客には入りにくいかもしれないが、郊外の幹線道路沿いには回転すしが数多く出店し、甲府市周辺などではやや高額だが味やひと工夫で勝負する店も増えている。

 福寿司(甲府市中央)の福田稔店長(37)は東京・銀座での料亭修行を経て、父親のすし店の近くで店を構える。国内のブドウの元祖「甲州」を使った有力ワイン醸造メーカー・勝沼醸造のワインを取りそろえ、すしとワインの組み合わせを提案する。

 元々は日本酒や焼酎しか置いていなかったが、山梨ですし店を開くなら山梨の酒と合わせたいと、「わさびしょうゆと塩辛に合うワイン」を探し求めたという。「馬のハラミの握り」など珍しいすしも用意し、「特に、すし店の『カウンターデビュー』をしたばかりの同世代の人に味わってもらえたら」と話す。

 また「舞鶴鮨」でマグロと並んで人気なのは、生アワビから作る煮貝を使ったすしだ。芦沢理事長によると、県同業組合全体で安くておいしい煮貝すしを提供しようと、研究が続けられている。来年10月に山梨で全国のすし店の大会が開催されるのも控えており、「観光客に『これぞ山梨のすし』といえるすしを出したい」と意気込む。

 山梨に来たら「山国なら山のもの」という発想を転換し、すしを味わうのもおもしろいかもしれない。

                  ◇

 ■人口10万人当たりの店舗数

順位 都道府県名 すし店数

 1 山梨県  41.8

 2 東京都  39.6

 3 石川県  35.3

 4 静岡県  29.6

 5 長崎県  29.3

 6 大阪府  29.0

 7 栃木県  28.7

 8 新潟県  28.1

 〃 茨城県   〃

10 北海道  28.0

 〃 群馬県   〃

12 宮城県  27.7

13 秋田県  27.6

14 福井県  27.4

15 富山県  27.2

16 岐阜県  26.8

17 愛知県  26.2

18 山形県  25.2

19 青森県  24.5

20 三重県  24.0

21 千葉県  23.9

22 愛媛県  23.6

23 長野県  23.3

24 和歌山県 23.2

25 兵庫県  22.9

26 岩手県  22.2

27 福島県  22.1

 〃 宮崎県   〃

29 埼玉県  21.6

30 佐賀県  21.1

31 京都府  21.0

 〃 福岡県   〃

 〃 鹿児島県  〃

34 徳島県  20.7

35 神奈川県 20.3

36 奈良県  19.1

37 大分県  17.8

38 熊本県  17.2

39 島根県  16.8

 〃 広島県   〃

41 岡山県  16.4

42 鳥取県  15.8

43 山口県  15.3

44 滋賀県  15.1

45 香川県  13.4

46 沖縄県  12.2

47 高知県  11.2

  全国平均  25.3

(注)総務省の平成18年事業所・企業統計調査と人口統計参照。宅配店は除く

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