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腕前と経営一握り 静岡・清水港 「すし職人」独立支援システム
技術のあるすし職人を独立させようと、冷凍マグロ水揚げ量全国一といわれる静岡・清水港で支援システム「登竜門」が始まって6年目を迎えた。店舗を貸し与え、一定期間独立開業してみるという実践的なシステム。すでに1人が独立を果たし、現在も夢を抱いた職人がシステムの門をたたいている。安価な回転ずしが席巻するなか、本格的な職人の店が増えることで、技術をつなごうと港が頑張っている。(福田涼太郎)
「登竜門」システムを導入しているのは、清水港にある「エスパルスドリームプラザ」(静岡市清水区)。同社営業部の市川寛さん(32)は「昔ながらのスタイルの店を増やしたかった」と話す。
プラザ内に設けられた全国や県内の有名すし店が並ぶ「清水すし横丁」。うち2店舗が「登竜門」用だ。現在、そこに「房州石毛」を出しているのが、10人目登竜門に選ばれた店主の石毛秋夫さん(45)。手際よくすしを握る。
店名の通り千葉県の房総半島育ちの石毛さんの武器はアジやタイなど地元から取り寄せたネタに清水で揚がったマグロなどを組み合わせたメニュー。県外からも客が来るほどの人気だ。
東京の老舗店で働いていた石毛さんが、上司の薦めで登竜門に参加したのは昨年9月。座席数10席ほどのスペースで、経営から洗い物まですべてをこなす。「視野が広くなった。1人で店を持てれば」と前を見据える。
登竜門は公募で、すしを握る基礎技術や売りとなる特徴的なネタ、メニューのほか、職人自身の人柄が選考基準となる。合格者はプラザ内の店舗と台所設備が格安で貸与される以外、すべてを自分で切り盛りする。期間は1年間。業績や客からの評判が悪い場合は途中でも退店となる。
参加者は口コミなどで知った東京の大規模店の職人が多い。独立が目標で、これまでの卒業生9人のうち、1人が店をもった。ただ、資金面で再び店で働く職人も多いのが現状だ。
各地の物産展ですしを握っていた長野邦夫さん(56)は独立の夢が捨てきれず平成17年に参加。長年培った江戸前の技術と越前カニを駆使したメニューが好評を博し、なじみの客が付いたことから清水区内で店を任された。現在は、「(郷里の島根県)隠岐で店を出したい」と登竜門初の2回目の出店中だ。
登竜門誕生の背景には、あらかじめ工場で切りつけられてあるネタや、機械で握られたシャリなどを利用する回転すし店が増え「技術のない職人が多い。本物の職人の店が減ってしまう」(市川さん)ことに対する危機感があった。
清水ですし店を経営している県鮨商生活衛生同業組合の竹内勝利副理事長も、「昔に比べて職人のなり手が少ない」と後継者不足を指摘。全国有数のすしどころの県内でもすし店数は元年に754店だったのが昨年は387店と半減した(同組合調べ)。竹内副理事長は「(登竜門について)技術だけでは経営は成り立たないので独立について学ぶというのは素晴らしい方法だ」と期待を寄せている。