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【夏の高校野球】新潟 佐渡高旋風
夏の高校野球新潟大会で佐渡高校が初の決勝進出で旋風を巻き起こした。23日の決勝戦で延長十一回の末に惜しくも敗れたが、三条市の三條機械スタジアムでは勝者の地元・県央工以上の大きな拍手が送られた。昭和50年代半ばには部存続の危機に見舞われ、過去8強の佐渡が旋風を巻き起こせたキーワードは就任3年目の深井浩司監督の“躾”(しつけ)だった。(石田征広)
合宿中のことだった。深井監督は道具を放置したままにしたナインを午後1時から午前1時までこんこんとしかり続けた。「あの時が一番恐かったです」と振り返るのは斎藤優輝主将。「十分なリードをとらずに盗塁したり、スクイズで三塁ランナーのスタートが遅れたり、とにかく、当たり前のことができないときは恐いですよ」とはベンチ入りの女子マネジャー。
「甲子園の扉に手をかけられるまでこれたのは深井監督のおかげ。エースの中河を除いた個々の選手の実力は正直なところ県央工の選手にかなわない。でも、チームとして戦えば何とかなるということを証明してくれた。昭和50年代半ば部員が12、13人なんてこともあったから夢みたい」と話すのはOB会長の鈴木潔さん(58)だ。
「躾が行き届いたチーム。攻守の交代も全力疾走で気持ちがいい」とは、長岡農の井上麻子監督。県内でただ一人の女性監督は夏の大会前の最後の練習試合で佐渡と対戦した印象をこう話した。「よく鍛えられていた。強いというより負ないチーム。やりにくかった」と、最上級の評価をしたのは決勝で対戦した県央工の鈴木春樹監督だった。
実は平成15年春の選抜の21世紀枠で出場した柏崎高の指揮をとったのが鈴木監督で、深井監督は部長として支えた間柄。大一番で追いつめられた先輩指揮官の評価には実感があった。鈴木監督が優勝インタビューで思わず吐露した「何度もあきらめかけた…」が何よりの裏付けだろう。
高校野球は“投手8割”という。チームの強さを左右するのは投手次第というたとえだが、今年の佐渡は公立高校のチーム強化の大きな参考になりそう。傑出した投手がいるとワンマンチームになりがちだが、それが全くなかった。“躾”は西武ライオンズを常勝軍団に育てた広岡達朗監督がチーム強化のために口癖にしていた言葉でもある。
勝利を最優先にチームのために地味なカバリングも労を惜しまずやること。その気配り目配りが実戦で力を出し切るカギになる。九回裏二死一、三塁のサヨナラの好機に一塁走者の痛い走塁ミスで勝利がすり抜けた。それでも、深井監督は「自分の采配(さいはい)ミスです」と話した。かつては確かに野球の前に躾があった。