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【人】「地産地消の仕事人」シェフ・藤木徳彦さん
今の時期は「凍(し)み大根」が旬−。長野県茅野市のフランス料理店「エスポワール」のシェフ、藤木徳彦さん(37)はこの地域の伝統食材をすすめる。輪切りにして寒風で干した大根と、味が濃いジビエ(鳥獣肉)を合わせる。地域で忘れ去られつつあった食材を、フランス料理の素材によみがえらせた。店をオープンして10年。地産地消への取り組みが評価され、農林水産省から「地産地消の仕事人」の認定を受けた。
26歳でオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)を始めた。開店して間もなく、「こんなものなら銀座でも食べられる」と客から指摘された。東京や海外から食材を仕入れ、料理を出していたからだった。
「地元産の食材でやる」。修業時代、農家から家族向けに作った見栄えの悪かったホウレンソウをもらった。鉄っぽい味と青臭いにおいに甘み。「(今までのものと比べ)どっちが本物かわからなくなった」と衝撃を受けた。ただ、開店当初は地元で採れる食材の仕入れ方法が分からず、使うことができなかった。
農家は、出荷用ではない家庭用の野菜などの食材を、商品として売ることをかたくなに拒否する。何度も足を運び、説得した。「食材の見た目の良しあしでなく、味の良さや生産者のこだわりを伝えたい」との思いが強まった。
地元産の農作物、シカやイノシシなどのジビエ、伝統食材など。信州の食材にフランス料理の技法を通して料理を発信してきた。地産地消に取り組み、都会を離れた田舎にまで客を引き寄せる力があることがわかった。
料理が評判になると、次は食材が注目された。生産者が商売にならなかった食材で生計が立つようになり、さらに高齢化していた農業の現場に新たな担い手が入るようになった。「食を通して地域を活性化できる」。地域に役立てたことがうれしかった。
全国の自治体から講演で呼ばれたりアドバイスを求められることが多く、地域活性化の手伝いをしている。これからも地産地消の活動を通して生産者を、そして地域を盛り上げていく。(太田明広)
■ふじき・のりひこ 昭和46年9月21日生まれの37歳。東京都三鷹市出身。駒場学園高校食物科卒。平成10年に茅野市内に「エスポワール」を開店。県内産食材にこだわり、野生の獣や鳥を使ったジビエ料理の普及にも努める。20年9月に農林水産省の「地産地消の仕事人」に選定された。