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【長野の外国人 NOビザ≠NO人権】(下)コンドーム嫌う日本人客

2008.8.1 02:35

 人身売買で長野県内のスナックに売られたある女性のケース。彼女の仕事には売春が含まれていた。しなければ入国時に背負わされた多額の借金は返せない。休憩が2万5000円で、宿泊だと3万5000円。1万円は店の取り分、残りで借金を返済する。これとは別にスナックの日当3000円を受け取ったが、3人で同居する住居費4万円のほか、食費として2万円を毎月請求された。休みなしに働いてためたわずかな貯金は、タイにいる家族のもとに送金した。

 「店にはタイ人が5人いたけど、売春をするのはビザのない者だけ。客の多くは40歳以上で、ほとんどがコンドームを使うのを嫌がった。10人いたら使うのは良くて半分。付けてと頼むと次から指名はなくなった。大きな声でののしられたこともあるし、店からも客に逆らうなと怒られた。大きな借金が残っているので従うしかなかった」と彼女は辛かった日々を振り返った。

 「だからHIVに感染したのは、日本人客からだと確信している。タイで出産したときに受けた検査では陰性だったし、その後は夫と別れ、ほかに身の覚えもまったくない」

                  ◇

 平成16年から昨年までの4年間で、タイ大使館が把握している人身売買被害は62件。うち半数以上の34件が長野県で発生している。この数字は、警察による検挙や被害者本人が助けを求めるなどして明らかになったケースで、実数はそれよりはるかに多いが、確かなのは長野県が人身売買の一大拠点となっていること。こうした状況は最近のことではなく、緊急保護施設「女性の家HELP」(東京都)に逃げ込む人身売買の被害にあったタイ人女性は、平成に入った頃すでに長野県出身者が多数を占めていた。

 被害女性の中には、最初から売春を覚悟してきた人もいるが、逃げ出した女性の多くは「実際に来ると考えていた以上にひどい状況だった」と答える。そのひとつがコンドームの問題。長野県の場合、理由は分からないが「男性がコンドームを着けたがらない」と被害者女性たちは口をそろえる。爆発的にHIV感染者が増えた時期のあるタイでは、コンドーム着用の意識は日本よりはるかに高い。ある被害者は、どれだけ頼んでも客がコンドームを着用しないことに身の危険を感じ、ホテルから逃げ出して保護された。

 「お金のために体を売るほうが悪い」という批判もある。しかし私たちが先に目を向けなければならないのは、弱い立場の女性に対して自分たちの欲望を押しつけ、何の罪の意識も感じない日本人がいるということ。こうした男性たちは、家庭に帰ればごく普通の夫や父親に戻る。だがこうした行動が、長野県内でHIV感染を拡大する大きな原因となっている。

 タイ大使館は「タイ国内でも人身売買の誘いに乗らないよう様々な形で啓発活動を行っているが、貧困に苦しむ人たちほど被害にあいやすい。日本の人たちにもこうした状況をもっと広く知ってほしい」と話しており、“加害者”に加わらないよう呼びかけている。

                  ◇

 ■タイ大使館への人身売買被害届け

       全国 長野県

平成16年 34件 19件

  17年 17件 11件

  18年  7件  2件

  19年  4件  2件

    計 62件 34件

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