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「北」核実験の監視強化 松代大本営跡で地震観測施設が稼働

2008.3.31 02:04

 北朝鮮の核実験を監視する機能を高めた気象庁の高性能地震計が稼働した。場所は太平洋戦争末期、軍部が建設を進めた地下大本営計画予定地に発足したことで知られる精密地震観測室(長野市松代町)。北朝鮮での不自然な地中の揺れをいち早くキャッチし、日本の危機管理に貢献する役目を負う。(比嘉一隆)

 武田信玄が川中島合戦の前線基地となる城を築き、真田氏の城下町として幕末まで栄えた長野市松代町。昭和19年11月、軍部はこの地に地下大本営建設を極秘裏に計画し、象山、舞鶴山、皆神山の三山に地下壕を掘り始めた。天皇、皇后の御座所を想定した施設までも作り、7割が完成したところで終戦。舞鶴山には、東西150メートル、南北350メートルの碁盤の目になった大坑道が残った。

 松代町は、海岸線に遠く本州のほぼ中央に位置。岩盤が安定していることなどから、戦後は中央気象台(現・気象庁)が未完成の施設を地震観測所に利用した。大坑道には最先端の地震計を置き、地震観測の主要拠点になっている。

 今月13日、大坑道入り口に新たに堀った地下700メートルのボーリング穴に高性能地震計を固定する作業が行われた。

 地下深部への同様の地震計の設置は国内初で、海外でも米カリフォルニア州やオクラホマ州など数地点しかない。国が平成18年度補正予算で付けた整備費は4億2500万円。巨費を投じて導入した背景には、北朝鮮による地下核実験の苦い経験があるからだ。

 18年10月9日。「北朝鮮が核実験を行った」との情報は、午前10時30分ごろ政府にもたらされた。同じころ、日本各地の観測地点でも地震波そのものは記録されていた。

 しかし、震源の位置や規模などを解析するには約2時間を要し、気象庁の発表の遅れに批判が出た。「調整に時間がかかり(発表までの)タイミングが遅れたのは遺憾であると思っている。今後はできるだけ迅速に出していきたい」。気象庁の平木哲長官は当時の記者会見で釈明を迫られた。

 精密地震観測室も人工的な爆発に特有の単調で小刻みな地震波を観測していた。だが、観測室の主な業務はマグニチュード(M)5・5クラス以上の大地震の解析。規模が大きければ、コンピューターが自動検出したデータをもとに、解析に入るが、中小規模の震動は対象にはなっていなかった。このため、北の核実験による(M)4・9クラスの“弱い揺れ”は、一日あたり10回近く世界各地で発生している地震の一つとして、解析の目から漏れてしまったわけだ。

 こうした反省を踏まえ今回、特定地域(北朝鮮)で発生した微弱震動を自動検出するコンピューターソフトを開発。地下深部に設置した高性能地震計には、遠距離地の中規模震動をとらえるのに適した「広帯域地震計」を組み込んだ。これにより、地上のノイズの影響を受けにくい環境で微弱震動を検出し、既存の8つの地震計とも連動させ、観測精度を高めた。

 28日夕方には、観測した波形の処理ができるようになり、現在、地震計から送られる信号受信やソフトの確認中だ。石川有三・精密地震観測室長は「地震の震源決定の時間短縮を目指すとともに、不自然な震動波形の検出に努めたい」と抱負を語る。

 地震観測だけでなく、安全保障上の責務がより増しただけに、精密地震観測室のセキュリティーも補強された。

 職員が作業する部屋へ通じる廊下に入るドアは暗証番号を入力しないと開かない仕組みにした。

 以前は、「部外者立ち入り禁止」の看板を掲げるだけで、中には看板を無視して入ってくる観光客もいたが、関係者以外は作業室には近寄れない。防犯カメラが備えられ、庁舎をぐるりとフェンスが囲う。

                   ◇

 ■精密地震観測室 気象庁地震火山部の地震津波監視課に置かれた組織。昭和22年に中央気象台松代分室として発足。24年に地震観測所になり、平成7年に現在の名称に変わった。直径10キロの範囲に埋設した8つの地震計で震源を探る「群列地震観測システム」、インターネットで集めた世界各地の地震計データを使って遠地地震を解析する「LISSデータ利用システム」などを配備する。包括的核実験禁止条約(CTBT)に基づく核実験の監視施設の一つ。1〜3号庁舎は戦時中に建設されたものを再利用している。

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