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観光都市泣く交通道徳 「松本ルール」 汚名返上へマナー運動
北アルプスの荘厳な山容と国宝・松本城を中心とした趣ある城下町、日本の原風景ともいえる田園地域など、魅力あふれる観光都市として知られる長野県松本市。清らかで文化の薫り高いイメージがある地方都市だが、どうも交通マナーの上で評判が悪いようだ。インターネット上では「松本ルール」という言葉をめぐって、交通道徳の欠如を批判する書き込みなどがかまびすしい。市でも対策に乗り出したが、果たして市民の心に届くか−。(太田浩信)
松本の市街地でハンドルを握ると、他の都市と周りの車の動きが違う。交差点で左折する際、対向の右折車がこちらよりも先に曲がり抜けようとする。すぐ前を走っていた車が左折すると、右折待ちの車が突っ込んできて、直進しようとするこちらは進行を妨げられて急ブレーキを踏まざるを得ない。そんなことがしょっちゅうだからだ。
こうした松本における“独特”の交通慣習が「松本ルール」と呼ばれ、かなり広く知られていることはつい最近まで知らなかった。インターネットで検索すると、出てくる出てくる。
右折車優先ともいえるルールについて、「何で松本ってトゲトゲした運転なんだろう?ほんと、自分以外は敵って感じで」「基本的には一言で言えば“譲り合いの精神がない”もしくは“自分本位”」「直進vs右折でも右折が最強。道ふさいだ者の勝ちです」などと書き込まれている。なかには「こちらに遊びに来るときには気をつけましょう」などという地元からの警鐘もあった。
「松本ルール」という言葉は、県外から着任した全国紙の記者が10年近く前に紙面に登場させたのが最初という話もあるが、定説はない。インターネットでの書き込みや新聞での投書などを通じて定着し、6月の松本市の定例市長会見でも菅谷昭市長が比喩(ひゆ)的にではあるが「松本ルール」という言葉を使用、認知度も上がりつつある。
こうした松本市の交通慣習について敏感なのは、松本のイメージにあこがれを抱いて訪れる観光客。市広報国際課の手島学広報公聴担当係長によると、交通マナーの悪さについて苦情や批判が寄せられるケースも。「つい地元にいると、それに気付かないこともあるが、県外から多くの観光客が訪れる観光都市として何とか改善しなければいけないことだと思う」と話す。
では「松本ルール」が誕生したのはなぜか。市交通安全課の下里幸巳課長補佐は、城下町特有の狭い道路や入り組んだ道路などの交通事情などを挙げる。どうやら車の交通量も多く、ややもすると渋滞の原因となってしまうため、せっかちにならざるを得ないということらしい。
「松本ルール」の汚名返上に向けて市では、9月から菅谷市長のかけ声で交通マナー向上運動がスタート。広報紙に啓発記事の連載を開始したほか、交通ルールの徹底を促す大型ステッカーを1500枚製作して公用車に張り、市民にアピールするなどの対策に乗り出した。
ただ、長年にわたって染みついた「松本ルール」を解消するのは簡単なことではない。「交通違反として取り締まれる問題ではなく、あくまでマナーの問題だけに、行政の限界もある」と下里課長補佐。運転者自身が自分の運転の“特殊性”に気づくまでには持続的で息の長い取り組みが求められる。
ちなみに11日から始まった年末の交通安全運動の長野県内でのスローガンは「信濃路はルールとマナーの走るみち」です。