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【土・日曜日に書く】政治部・阿比留瑠比 愚直に信を問うてほしい
◆「巨大民主党」成立も
衆院議員の任期満了を目前にしてようやく衆院が解散され、日本の針路を決める「政権選択選挙」が事実上、スタートした。8月30日の投開票日まで、炎天下での熱く長い選挙戦が繰りひろげられることになった。自民、民主両党によるまさに天下分け目の決戦だ。
これほど重要な意味を持つ選挙はめったにない。それなのにどこか盛り上がりに欠けてみえるのは、あらかじめ民主党の勝利という趨勢(すうせい)が明らかだからだろう。
事前の選挙結果予想では、「自民78議席、民主332議席」(週刊現代8月1日号)という極端な数字も躍っている。ここまでいかずとも、民主党が241議席を超えて単独過半数を制するとの見方が支配的なのは確かだ。
小選挙区制度のもとでは、勢いのある政党が独り勝ちする傾向が出る。仮に自民党が大敗した場合はどうなるか。求心力も存在理由も見失った自民党は四分五裂し、政権の再奪取など手の届かない小政党になるか、雲散霧消してしまうことだってありえるだろう。
「最後の選挙。自民党にとっては、いろんな意味で最後の勝負の選挙だろう」
加藤紘一元幹事長は、今回の衆院選についてこう位置づける。これは決して誇張した話ではない。
つまり、この衆院選は、民主党の小沢一郎代表代行が掲げてきた「政権交代可能な二大政党制」の実現につながるとは限らないのだ。気が付けば国会には巨大な民主党と少数政党しか残らなかった、という事態も十分想定されることは指摘しておきたい。
国民は長年続いた自民党政権の旧態依然とした体質、時代と環境の変化についていけず過去の成功体験にすがるようなありさまにあきれはて、とにかく「チェンジ」を求めているのではないか。
◆ご都合主義の対応
一方、民主党は国民の「自民党政治では何も変わらず、よくならない」といういわば「消極的な支持」の追い風を受け、大きく帆を膨らませて突き進んでいるようだ。小沢、鳩山由紀夫両氏と2代の代表に発覚した政治資金疑惑も、流れを変えることはなかった。
民主党は最近では、政権奪取後を意識して外交・安全保障をはじめとする政策を修正し、現実路線をとりつつある。それ自体は歓迎するが、では今まで国民に訴えてきたことは何だったのか。
鳩山氏はインド洋での海上自衛隊による給油活動について17日、記者団に「すぐにやめるのはかなり無謀な議論だ」と指摘し、当面は活動継続を容認する考えを示した。これまで給油活動について「憲法違反だ」(小沢氏)と反対を続け、実際に平成19年11月から約4カ月間、中断に追い込んだことへの反省の弁はなかった。
岡田克也幹事長は18日の講演で永住外国人への地方参政権付与について「小沢氏も鳩山氏も私も付与すべきだという意見だ」と述べた上で、衆院選政権公約(マニフェスト)には盛り込まない考えを表明したという。執行部はみな賛成なのでいずれやるつもりだが、政権獲得までとりあえず公約からは外しておくということだろう。
国民の目など、何とでもごまかせると考えているようにも映る。
◆なぜ今はやらないのか
「政権取ったら変わるというんだったら、なぜ今はやらないのか。それは、反対するためにだけ反対していたということを自ら言っていることにならないか」
麻生太郎首相は21日の衆院解散後の記者会見でこう強調した。民主党が審議を放棄し、廃案となった北朝鮮関連船舶への貨物検査法案への対応など、民主党の安保政策を批判したものだった。
この言葉はもっともだが、では首相自身はどうか。昨年6月に、すでに集団的自衛権の政府解釈変更を求める懇談会最終報告が出ているにもかかわらず、なぜ放置しているのか。これは北朝鮮や中国の核・ミサイルの脅威に備え、日米同盟を機能させるためには喫緊の課題であり、首相がまず一歩踏み出すべきだろう。
また、首相は今年2月の講演では、民主党に関し「ご存じ日教組に支えられている。私どもは断固戦っていく」と述べ、現職首相として初めて日教組と戦うことを表明した。ところが、せっかく準備された公立学校教員の違法な政治活動に国家公務員並みの罰則を設ける法案は棚上げされた。
首相は記者会見で「景気回復最優先に取り組んできた」と実績を強調した。だが、世界同時不況に際し景気対策を重視するのは、だれが首相でも同じことだろう。
国民相手に駆け引きし、やらない言い訳をしても仕方がない。自民党も民主党も、やるべきこと、こうあるべきだと信じることを堂々と訴え、愚直に実行する姿勢を見せてほしい。(あびる るい)