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【土・日曜日に書く】論説副委員長・中静敬一郎 性急にすぎないか麻生評価
麻生太郎内閣の発足から、20日で88日だ。現状は20%台に内閣支持率が急落し、「やめろ」コールが高まっている。定額給付金などをめぐる自らの発言のぶれ、失言などにより国民の間に失望感が広がっていることが背景にある。
米国では政権発足から100日間をハネムーン(蜜月)といい、お手並みを拝見する。まだ実績が出てこない中、評価は時期尚早と判断しているからであろう。
日本においては、麻生首相自らが米国発の経済危機を「百年に一度」の事態であり、スピードがポイントと述べたことと、第2次補正予算案の今国会提出見送りとの食い違いを突かれ、それで評価が固まった感がある。
だが、麻生政権への評価は少し性急にすぎないか。首相がこれまで為(な)してきたことは少しにせよ、これから為そうとしていることも含め、きちんと評価する必要があるのではないか。
≪「文士論」と漢字の誤読≫
支持率下落の契機になったのは、「首相、『踏襲』は『とうしゅう』です…」を見出しにとった11月11日付朝日新聞朝刊だ。
ここから首相の資質を疑問視する報道一色になった。さて、これで資質を論じられるかどうか。
立教大学の逢坂巌助教は「月刊現代」(2009年1月号)で、麻生氏が落選時の1985年から現在までの23年間、「嘉麻(かま)の里」という地方誌に2000字ほどの原稿を、ほぼ毎月にわたって寄稿していることを踏まえ、「筆者がなにより意外の念を覚えたのは、彼が『文士』であるということだ」「練達の『エッセイスト』でもある」と分析している。
寄稿から引用してみよう。
「私は正しい保守というか真正保守は、常に時代を見て、自らを改革せねばならないと確信しています。革新のように『全(すべ)ての破壊の上に創造が有る』なんて叫んでいれば良い訳にゃいかず、新しい時代に合った日本を創(つく)らねばならないんです」(昨年11月号)
「マスコミとか、自称識者と思っている人も、もう少し素直に物事を、特に日本という祖国の現実を見て、今や我が国は多くの分野で世界の先頭を走っていることを認めると、多くの事柄が見えてくるんじゃないでしょうか」(昨年1月号)
これを読めば、誤読から知的水準を推し量る難しさがわかる。
≪「直観力と先見性あり」≫
石破茂農水相は先月末、自身のホームページにこう書いた。
「自分が内閣の一員であるから言うのではなく、本当に麻生総理はよくやっておられると思います。直観力、先見性は並みの政治家が遠く及ばないところだとつくづく思います。最近の麻生バッシングには、『地位に就いている者を貶(おとし)めて自らを高からしむ』的な雰囲気が感じられる、と言ったら言い過ぎでしょうか」
直観力と先見性とは何か。農水相に聞いた。答えはこうだ。
2001年9月11日、米中枢同時テロを受けて、当時の小泉純一郎首相はテロとの戦いに関し、新法より、日本周辺での緊急事態対処法である周辺事態法を適用しようとしていた。
石破氏が「アフガニスタンに周辺事態法適用は無理」と、自民党政調会長だった麻生氏にかけ合ったところ、麻生氏は「いろんなところに派遣しないといけないな。周辺事態法は変だ。新法をつくってほしい」と指示し、すぐさま小泉首相と直談判して了解を取り付けた。テロ対策特別措置法の誕生である。農水相は「あの決断がなかったら、日本の国際協力はなかった」とまで語った。
むろん、首相就任前のことであり、これで評価は下せない。
ただ、11月15日の金融サミットで、麻生首相が表明した国際通貨基金(IMF)機能強化のための最大1000億ドル融資の実行に対し、IMFが日本に感謝する特別声明を出したり、ブラウン英首相が「指導的な政治家にふさわしい立派な政策だ」などと歓迎したことには言及しておきたい。
≪統治力にかかっている≫
ある政府関係者によると、経営者で、オタク文化がわかり、英会話が堪能な麻生氏は外交にはうってつけという。一昨年の北朝鮮の弾道ミサイル乱射に対し、国連安保理が非難決議を行った際も、当時の麻生外相は午前2時から同4時ごろまで、各国外相に電話をかけまくる日々が続いたという。
問題は、首相の統治力だ。政権のたがを締め直し、歳出圧力に突っ走る与党をいかに押さえ込むか。
心配なのは、首相がなんとしても実現したい政策課題がよく見えないことだ。それを国民にわかるかたちで早急に示し、あとは解散権、人事権を行使すればよい。ここは歯をくいしばる時だ。時間はそう残されていないのだから。(なかしず けいいちろう)