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【政治部デスクの斜め書き】グッバイ、○○さん! (1/5ページ)
■強さの秘密
来年、海の向こうではブッシュ米大統領が民主党のオバマ次期大統領にバトンを渡し、日本では小泉純一郎元首相が次期衆院選への出馬を次男に譲り、政界を引退します。平成13年4月の小泉政権誕生後、その大半を外務省と首相官邸を拠点に取材してきたため、小泉さんの政界引退には一抹の寂しさを感じます。内政では何と言っても郵政解散と総選挙、外交では一連の日朝交渉が印象深く思い出されます。(佐々木類)
最近では、安倍晋三さんに続き、福田康夫さんと歴代の首相がいともあっさりと政権を投げ出すふがいなさが目立ちます。自民党内で圧倒的な支持を受けて総裁になった麻生太郎首相も就任2カ月で早くも支持率は急降下し、渡辺喜美元行革担当相のように離党を口走る議員も出てきました。
ではなぜ、小泉さんは長期政権を実現したのか。政界引退を前に、その強さの秘密について、取材メモをたぐりながら整理しておきたいと思います。
小泉さんが得意としたワンフレーズには「聖域なき構造改革」「改革なくして成長なし」等々、誰もが知っている有名なものを含めて数え上げたらきりがないほどたくさんあります。しかし、ほとんど誰にも知られていないこんな彼の言葉が、私にとって一番忘れられないものとなりました。
「結局、景気が良かったから(政権が)続いたんだよな」
政権末期、与党幹部と首相公邸で酒を飲みながら語ったものですが、なかなか正鵠を得た発言だと思います。衆参の「ねじれ」状況の中、すべてが景気のせいだとは言いませんが、安倍さん、福田さんの場合、景気悪化の中で「何をやってもダメ」、「何を言ってもケチがつく」という底なし沼にはまったといえるのではないでしょうか。
景気が悪ければ、国民も小泉劇場に拍手喝采する余裕なんてなかったでしょうし、逆に景気がよければ安倍、福田両政権をみる国民の目も、もう少し温かなものになっていたのではないかと思います。
その意味で、支持率が一気に下落した麻生政権も失言とか2転3転する発言など諸般の理由はあるのでしょうが、基本的には歴代政権と同じように、悪化の一途をたどる景気に翻弄されているといえるでしょう。
そんな景気に支えられた小泉政権を「光と影」という側面から振り返ってみたいと思います。「光」の部分でいえば、劇場型政治を永田町に持ち込んで国民が第2、第3幕と続きを見たくなるように、政治を面白くしたことでしょう。
首相官邸でキャップをしていた当時、政局の節目で東京・駒場の大学キャンパスを何度か訪れました。東京大学の御厨貴教授に話をうかがうためです。
先生が常々言っていたことですが、小泉首相は、本来ならば味方であるはずの自民党に抵抗勢力=悪役をつくり、これをバッサバッサと切っていきました。そういう小泉劇場を通じて政治に関心のなかった国民を政治に引き付けた功績は大きいとおっしゃっていました。郵政民営化に反対する議員の選挙区に賛成派の刺客を放った郵政解散がそのピークでしょう。
一方で、小泉流の政治というのは、抵抗勢力=敵を見出して容赦なくたたくものでしたが、そこには妥協も、調整もありませんでした。政治というのはある意味、敵を瞬時に選別するという点と、長期的に妥協して調整するという面があります。しかし、小泉さんが首相になってからは、与党内調整という柔らかな政治技法が実質的にはまったく見られなくなりました。
昔は、利権の匂いがそこはかとなく漂ってくるような、ちょっといかがわしい感じの族議員というか、調整型の政治家がいっぱいいましたが、小泉政権下の自民党では、絶滅こそしませんでしたが、絶滅危惧種ぐらいの少数派にはなっておりました。それまで政府法案の事前審査の場だった自民党の政務調査会、総務会などは不満分子のガス抜きの場と化しました。橋本龍太郎元首相が導入した経済財政諮問会議を政策遂行のエンジンとし、世論の圧倒的な支持を背景に大統領型のトップダウンで、与党を引っ張っていったのが小泉政治でした。