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【産経抄】11月8日

2008.11.8 03:16

 ハリウッド映画には、刑務所を舞台にした名作が多い。そのひとつ『ショーシャンクの空に』のなかに、こんなシーンがある。長年、刑務所内の図書館係を務めてきたブルックスという老人が、囚人仲間に刃物を突きつける。

 ▼仮釈放が決まったものの、外の世界が恐ろしい。罪を犯して、刑務所にとどまろうとしたのだ。案の定、「シャバ」の生活に疲れ果て、自室の梁(はり)に「ブルックスここにありき」と刻んで首を吊(つ)る。

 ▼きのう公表された『平成20年版犯罪白書』によると、昨年、「一般刑法犯」として検挙された65歳以上の高齢者は、4万8605人にのぼり、20年前の約5倍になった。昨年服役した65歳以上の受刑者も、6倍を超えている。受刑者の高齢化は、数年前から指摘されてきた。

 ▼広島県尾道市にある尾道刑務支所には、高齢受刑者のための専用施設がある。段差がなく、車イスごと入れるトイレが設置されている。食事も「きざみ食」「減塩食」などが用意される。同様の施設が、他の3カ所の刑務所で建設中だという。刑務所内のバリアフリー化が進むのは、結構なことだ。

 ▼一方で、出所した高齢者が、居心地のいい刑務所に戻るために、万引、窃盗などの犯罪を重ねる新たな問題が深刻化している。映画では、二十数年後に別の老囚人が仮釈放されて、ブルックスのいた部屋に住む。同じ孤独をかみしめるが、思いもかけない未来が待っていた。

 ▼現実は映画のハッピーエンドのようにいかない。多くのお年寄りと介護に当たる人たちが、元受刑者たちも逃げ出したくなる、過酷な生活を強いられている。そのことを思えば、定額給付金の配布に、所得制限するのしないの、といった議論が、むなしく聞こえてならない。

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