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忘れられた「集団的自衛権」 政治課題に上らず

2008.4.3 18:11
このニュースのトピックス安倍前首相

 昨年9月の福田内閣発足以降、福田康夫首相が隅に追いやり、政治課題としてすっかり話題に上らなくなった重要問題がある。安倍晋三前首相が推進していた集団的自衛権の行使と憲法の関係の再整理がそれだ。安倍氏が、日米同盟の双務性を高め、米国に対して対等の発言権を持つために打ち破ろうとした安全保障上のタブーは、福田首相によって再び厳重に「封印」されようとしている。

 安倍氏は昨年4月の訪米時に、ブッシュ大統領に対しこの問題を再整理する方針を伝え、5月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置。周辺事態に公海上で米艦船が攻撃を受けた際、近くの海上自衛隊艦船が敵に反撃できるかどうかなど4つの事例を示し、検討を指示した。

 懇談会では「権利」はあるが、憲法上「行使」はできないとする政府解釈に対する批判が相次ぎ、昨年中に解釈の見直しを求める報告書を出す方向だった。

 安倍氏は集団的自衛権の全面容認ではなく、昭和35年に祖父の岸信介元首相が示した「他国の領土、領空、領海では集団的自衛権を行使しない」とする「制限行使論」に立ち戻る考えだったとされる。自国の領土などでは集団的自衛権を行使できるという論理だ。

 日本近海の公海上で米軍艦船が攻撃を受けた際に、日本は何もできないとする政府解釈に従えば「日米同盟は崩壊する」(防衛庁長官経験者)とされる。国際テロ組織の脅威も顕在化した現在、この問題は喫緊の課題であるはずだ。

 ところが、福田内閣発足後、懇談会は開かれていない。福田首相に提出されるはずの報告書は「中身はできている」(政府筋)が、たなざらしのままだ。

 福田首相が国会運営に苦慮しているのはわかるが、この問題はそれとはかかわりなく首相の決断で前に進められる。首相には安倍氏がまいた種を枯れさせず、育てる度量を見せてほしい。(阿比留瑠比)

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