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【コラム・断】揺るがぬ志を
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「ひとは何か大きな仕事に就くとき、必ず引き際を考えておかなくてはならない」。安倍前首相の辞任を見て私は思った。公人の退路に美学が問われるのは当然のことだ。そういう意味では今回、安倍前首相が美学を欠いたことは否めない。
しかし、と私は思ってしまう。最後まで「戦後レジームからの脱却」という志を捨てなかったからこそ、前首相はあそこまで追いつめられたのではなかったか、と。
戦後60年続いたものを数年で打破することは無理といえば無理な話だったのかもしれぬ。だから法案を通すたびに強行採決と叩(たた)かれた。そのうえ、閣僚の醜聞が噴出した。甘い組閣だったのは事実にせよ、悪意ある抵抗勢力がなければ、あそこまで醜聞も出まい。
私が恐れるのは安倍前首相の退陣によって、安倍内閣が構築しようとした、正しいこの国のありようまで否定されてしまうことだ。誰が自民党総裁になるかによって、国のあり方がゆれてしまうのは私たちの国にとっていいことではない。
安倍前首相を叩(たた)くのは簡単だ。しかしそれで、この国が取り戻そうとした正しいあり方まで捨ててしまってはならない。前首相が掲げた目標は正しかったと私は今でも確信する。大切なのは私たちがその志を忘れず、その志にふさわしい国の主を選んでいくことだ。
この国は民主主義の国なのだという最初の公の約束を、私たちは決して忘れてはならない。私たちが求めるこの国をありようを盤石とするにふさわしい首相、総裁をわれわれが求め、支え、駄目なら辞任を求めるべきなのである。そんな国民になることこそが必要なのだと、私は今回の顛末(てんまつ)をみていて思ったのだった。(漫画家・さかもと未明)