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【老いの一喝】ノンフィクション作家・上坂冬子 四島不法占拠を追及せよ
日本人なら大半が承知していることだが、なぜ北方領土四島がいまだに日本領として決着がついていないかというと、ロシア(当時はソ連)の不法が放置されているからである。戦後のどさくさまぎれに日本領の四島に乗り込んできて、そのまま六十余年居座って動かないのだ。それだけではない。安政年間から住み続けた日本人をひとり残らず戦後2年目に四島から追い出して今日に至っている。
こんなバカな話がまかり通るなら各国の領土などあってなきがごとしだが、それが解決していない。スターリン時代のロシアの恐るべき無法と、それに無抵抗の日本の驚くべき弱腰である。
互いに自国領であるとして譲らなかった場合どうなるか。両国ともビザ(出入国カード)を求め合うことになる。私はこれまでに3度、四島に渡ったが、日本人の先祖代々の墓や「陸軍一等兵○○」と書かれた墓が島の各地にそのまま残っているのをたしかめてきた。つまり日本人はかつての墓をそのまま残しながら、日本の領土に墓参りにすら自由に行けないのである。
日本人としては憤慨この上ないし、ロシア人としてもどうやら自国の不法ぶりが日本人を墓参りさえさせぬ状況においていることに気がひける人もいたのか、ゴルバチョフ大統領のころ両国で話し合って特定の一時期のみ、互いにビザなしで行き来できる期間を設けた。その期間に日本人は墓参りをすませロシア人は日本を自由に観光できるようにはかったのである。両国の知恵というべきであろう。
それが、である。
この1月28日に国後(くなしり)島に公用で行った日本の外務省の船に対してロシア側がビザを出さねば上陸させないと突っぱねたのである。約束がちがう。こともあろうに日本の外務省は人道援助と称して1280万円相当の医療品を恵与するために行ったのである。これまでも例えばあの地域で地震などがあった場合、被害を思いやって日本側は四島に人道支援を何度とどけたことか。
その度に私は日本の領土内に住む外国人を哀れんでのことだと解釈してきた。それが、いまになって人道支援はいらぬ、ビザを出せというのだ。自国の領土内にとどけものをするのに、なぜ出入国カードが要るのか。となると、この先日本人は再び先祖の墓参りすらできないことになる。
外務省も外務省ではないか。人道援助の門前払いに対して、おめおめと引き下がってきた神経を私は理解しかねる。なぜ体を張って白黒決着つけてこぬ。
日本の外務省が追い返されてまもなく恒例の「北方領土の日」がやってきた。麻生首相はおそらく烈火のごとく怒るだろうと期待していたところ、「引き続き強い意志を持って交渉していく」と述べたにすぎない。おまけに18日には両国のトップが「独創的なアプローチで解決したい」だと。今さら新しい解決法など打ち出す必要がどこにあろう。ロシアが不法占拠を認めれば済むことだ。
麻生内閣の支持率が下がっている。しかし私はそれなりに頑張っておられると思ってきた。にもかかわらず、これほどコケにされて何の具体策も持てないなら、こんどこそ不支持にまわるか。(かみさか ふゆこ)