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【正論】空幕長更迭と「思想信条の自由」 日本大学教授・百地章 (1/3ページ)
田母神氏の思想が問題?
やはり懸念していたとおりの展開となった。田母神俊雄前航空幕僚長の更迭をきっかけに、防衛省では田母神氏と同じ懸賞論文に応募していた幹部多数に対して、防衛監察に乗り出した(産経新聞11月15日付)。記事によれば、防衛監察は通常、業者との癒着などの不祥事を対象とするもので、論文内容についての監察は異例であり、「思想・信条の自由に踏み込みかねない」などといった強い反発が起こっているという。
確かに田母神問題についていえば、たとえ個人的な見解であれ、航空幕僚長という要職にある人が政府見解(「村山談話」)と相いれない論文を公表したことについては批判の余地があろう。つまり、「表現の自由」については、立場上、一定の制限を受けてもやむをえない。しかし「思想・信条の自由」となれば別である。
ところが、更迭以後の新聞論調や野党政治家などの批判を見ていると、論文内容を槍玉(やりだま)に挙げ、田母神氏があたかも“危険人物”であるかのように非難したり、同氏の思想(歴史観)そのものを糾弾する傾向が見られる。これは憲法上、見過ごせない重大な問題を孕(はら)んでいる。
今回の一連の経過を振り返ると、(1)自衛隊のトップが、たとえ個人的であれ政府見解と異なる意見を外部に発表したことが問題なのか、(2)防衛省内規に違反し、上司に文書で届け出ることなく論文を発表したことが問題なのか、それとも、(3)自衛隊の幹部が村山談話に反するような思想(歴史観)の持ち主であること自体が問題とされたのか、これが曖昧(あいまい)なまま処分だけが先行した。そして、防衛省は隊員の防衛監察まで始めた。
思想差別を勧めるのか
この点、読売、東京両紙は、個々人がどのような歴史認識を持とうが自由だが、航空自衛隊のトップが政府見解と相いれない見解を公表したことが問題、としていた(11月2日)。同日の産経主張がいうように、政府見解に対しては個人的に疑問を呈することさえできないというのであれば問題だが、これは一応理にかなったものといえよう。

