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【明日へのフォーカス】編集委員・高畑昭男 サミット覆う「不安の霧」

2008.7.8 03:14

 北海道洞爺湖サミットの首脳たちが宿泊する「ザ・ウィンザーホテル洞爺」に、2泊ほどしたことがある。サミット会場に決まった直後の昨年5月のことだった。

 ホテルの売り物の一つは、豪華な吹き抜けのロビーだ。窓側は天井から床まで高価な一枚ガラスで仕切られ、絶景のパノラマが広がる。シャンパングラスを手にした首脳や夫人たちがここで華やかな社交外交を展開するのか−などと勝手に空想をめぐらせた。

 だが、標高600メートル余のパノラマは、周囲が霧や雲に閉ざされると一転、不透明で不安げな世界に変わる。暗い湖面に浮かぶ中の島が不気味な怪獣の姿に見えて胸騒ぎを覚えた。実は、サミットを見守る人々の心にもそんな不安の霧が渦巻いてはいないか。

 胸騒ぎの第1は、参加首脳たちが自信と元気に満ちているとは言いがたいことだ。議長役の福田康夫首相とブラウン英首相は、国内の支持率が2割台と低迷中だ。任期があと半年のブッシュ米大統領と、就任1年を過ぎたサルコジ仏大統領は30%台。ハーパー加首相も含めて、8首脳中5人までがいわば国民との十分な「共鳴力」を欠いた状態にあるのだ。

 第2は、世界を覆う悲観ムードだ。先月、米調査機関が発表した世界24カ国対象の国際世論調査によると、4分の3にあたる18カ国の市民が自国経済に深刻な「先行き不安」を訴えた。また、政治も含めた国家の現状全般を「不満」とする意見は米仏で70%、英独でも6割を超えていたという。

 政府は国民への訴求力を欠き、国民は国家の先行きに不安や不満を募らせる。世界を見渡して、誰もがうなずく指導者がいない。国際社会の中心にポッカリと「リーダーシップの空白」というべき巨大な穴があいた状態だ。レームダック(死に体)といわれるブッシュ大統領の米国だけでなく、今の世界は「誰もがブッシュ状態にある」(米誌)との声すらある。

 先進諸国が半ば自信を失いつつある中で、威勢がいいのは中国やインド(経済)、ロシア(エネルギー)などだ。英仏は「中国、インドなどを加えたG13にしては」などの構想も口にし始めた。

 だが、そんなことではせっかくのサミット精神が泣くというものだ。1975年に仏ランブイエでスタートして以来、サミット首脳は自由、民主主義、人権などの共通の価値と理念を軸に結束し自由諸国の未来を構想し、設計していく「世界ガバナンス(統治)」の責務を負ってきたのではないか。

 とくに今回は、核不拡散などの古い課題に加えて環境、食糧、エネルギーなどの新たな課題が絡み合っている。地球が直面する難題に明確な優先順位をつけて解決を図る。国益の増進と相互調整も欠かせない。「相手の嫌がることは言わない」といった引けた姿勢や、ガバナンスの責任を他の国々に拡散し合うようでは話が前に進まない。各首脳が「共通の信念と責任」を果たしてこそ、サミットの意味がある。責任を果たす自信がない人や国は、正規メンバーの席を返上してもらいたい。

 最近は「反サミット」「反グローバリズム」を叫ぶ勢力も現れ、サミットをみつめる目も多様化した。そうした人々をも説得して取り込み、世界の苦境を切り開くのが首脳たちの役目だ。とりわけ議長国の責任は重い。「姿が見えない主催国」(英紙)などの揶揄(やゆ)をはねつけて、福田首相の大胆で華麗な指導力を見たい。(たかはた あきお)

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