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【洞爺湖サミットに寄せて】元首相・中曽根康弘 国益にかける首相の覚悟
今、日本は正念場を迎えている。目前に迫った主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で、議長国としてリーダーシップを発揮できるかどうかに、国の浮沈がかかっているといっても過言ではない。鍵を握るのは福田康夫首相の覚悟だ。
目を世界に転じれば、危機的状況は明らかだ。中でも警戒すべきはBRICs(ブリックス)、すなわちブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)の台頭であろう。一方で日本は経済大国としての存在感を急速に弱めつつある。個人GDP(国内総生産)では2年前から経済協力開発機構(OECD)加盟国中18番目に落ち込んでいる。
このような情勢が何をもたらすかは、米国の大統領選からも一目瞭然(りょうぜん)といえる。共和党のマケイン候補は親日的な姿勢を崩さないが、民主党のオバマ候補は中国寄りの外交姿勢をのぞかせている。サミットで日本が確たる存在感を示さなければ、米国が、そして世界が、日本を見限ることだってあり得ない話ではない。
逆に言えばサミットは威信を取り戻す絶好のチャンスである。
そもそもサミットとは何か。私は、国際政治のオリンピックであると考えている。年に1回、先進国のトップリーダーが一堂に会し、国の威信と政治力のすべてを総動員した激しい駆け引きを繰り広げる。参加することに意義がある式のかかわり方は許されない。国益をかけ、政治上のメダルを獲(と)りにいかなければならない。殊(こと)に開催国はメダル獲得が義務付けられる。
そのために首相の覚悟が必要なのだ。覚悟とは、その時々の世論やマスコミ論調に流されず、自ら国益と信じる方針を政治生命をかけてでも貫き通す不退転の決意だ。議長国がまとめる主要8カ国(G8)の共同声明に何を盛り込めるか、サミットは結果がすべてである。
洞爺湖サミットは、参加国がG8のほか、BRICsやアフリカ諸国がアウトリーチ(拡大)会合に加わり、計22カ国の首脳が顔をそろえる過去最大規模のものとなる。気候変動、食料価格高騰、アフリカ支援、世界経済など地球規模の課題は多い。
注目の温室効果ガス削減は、大量排出国である米中印各国を説得し、数値目標を設定しなければならない。日本以上に数値目標化を求める欧州各国との折り合いをどうつけるかも課題だ。
各国の思惑が完全に一致することなどあり得ない。議長である福田首相には、落としどころを見極め、強引に話をまとめて共同声明に盛り込むべく、決然たる指導力を発揮することが求められる。
北朝鮮による拉致は人道、人権の問題でもあるから、決議文か議長総括で大きく取り上げる必要がある。北朝鮮の核廃絶問題に関する6カ国協議もG8として支援しなければならない。
ロシアとの間には北方領土問題も存在する。支援問題でG8と途上国の会合は定例化すべきだ。
福田首相の姿勢は「お友達外交」と揶揄(やゆ)されることが多い。しかしこの言葉自体に、私はあまり否定的な響きを感じない。首脳が集まる会合で主導権を発揮するには、議長に好感を持つ味方を多数つくることは必須だからだ。(なかそね やすひろ)

