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【産経抄】6月28日

2008.6.28 02:57
このニュースのトピックス産経抄

 10年ほど前、テキサス州知事時代のブッシュ米大統領にお目にかかったことがある。むろんその他大勢のひとりとしてだ。大統領選を目指すのかが注目されていたころで、話題はそのことに集中したが、ブッシュ氏の答えが今も忘れられない。

 ▼「私は少し有名な女性の子供に生まれまして…」。言うまでもなく父親のブッシュ元大統領のバーバラ夫人である。大統領の子供だったための悩みを打ち明け、出馬は家族の了解を得られることが前提だと述べた。「家族思い」のごく普通の米国人のように感じた。

 ▼だからそのブッシュ大統領が、愛する娘を拉致された横田早紀江さんらと直接会い、励ましたのはごく自然に思えた。26日の記者会見でもその時の面会に触れ「北朝鮮に拉致された日本市民のことを決して忘れない」と語った。その言葉にもきっとウソはないだろう。

 ▼しかし同じ記者会見で大統領は、北朝鮮へのテロ支援国家指定解除を宣言した。日本が期待してきた拉致問題へのカードをあっさり放り投げてしまったのだ。あまりにも冷酷な政治の世界である。被害者の家族ばかりでなく日本人みんなが臍(ほぞ)をかむ思いにさせられた。

 ▼米政府が「拉致置き去り」のまま指定解除に踏み切る動きは、何カ月も前からあった。その間に何もできなかったのかという思いはある。だがもっと問題と思えるのは、家族らを米政府や大統領の「善意」に頼らせた日本政府や政治家の無為無策といっていい。

 ▼北朝鮮が拉致問題の再調査を表明しただけで、すぐ制裁解除を打ち出す。そんなことをくり返していては、足もとを見られるだけだ。米のテロ支援国家指定という大きなカードをなくした後、必要なのは自前の強いカードを手にすることである。

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