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【土・日曜日に書く】論説副委員長・岩崎慶市 「骨太2006」を考える

2008.6.14 03:36
このニュースのトピックス国会

 ◆指針揺るがす歳出圧力

 財政構造改革の指針である「骨太の方針2006」が揺らいでいる。策定してからたったの2年で危うくなるとは一体、どうしたことか。改めてこの指針の持つ意味を考えておきたい。

 「骨太2006」は小泉政権の末期に策定されたもので、2大目標を掲げた。2011年度の基礎的財政収支を黒字化させることと2010年代半ばから債務残高を国内総生産(GDP)比で安定的に引き下げることである。

 この目標は歳出・歳入一体改革で達成するとし、2011年度黒字化に向けては必要な対応額を示し、具体的な工程表が策定された。とくに歳出は分野別に削減目標が決められた。

 それがあらゆる分野で増加圧力にさらされているのである。毎年2200億円削減が目標の社会保障では、自民党の厚生労働族が集まる部会で、焦点の後期高齢者医療制度問題や医師不足などを理由に目標見送りが決議された。

 少子化に応じて削減することになっている文教予算も7・5兆円という異常な増額論がまかり通る。4〜2%削減が目標の政府開発援助(ODA)も大幅増額論が高まるといった具合である。

 先の財政制度等審議会の建議が「予算分捕り合戦の様相」と強い懸念を示したように、この歳出圧力は7年前に小泉政権が構造改革に着手してから初めてだろう。その呼び水が福田政権の決断した道路特定財源の一般財源化だというのだから、実に皮肉な話だ。

 だが、特定財源の国税分が3・3兆円であることを考えれば、族議員たちの言う余剰財源など生まれないのはだれでもわかる。彼らが一般財源化を故意に曲解して悪用しているだけだろう。

 ◆危険な増税の皮算用

 底流には改革への鬱積(うっせき)した不満がある。確かに「骨太2006」の歳出削減工程は、増税封じ込めを狙った“上げ潮派”の影響を色濃く受けて厳しくなった面がないではない。政府がきめ細かい対応を欠いた点もあろう。

 しかし、社会保障にしても診療報酬や雇用、介護保険の制度見直しなどによる削減余地はまだまだある。真に必要な対策を講じるのは当然だが、それでもそうした削減を実施すれば目標は十分に維持できるはずだ。

 ここで少しでも工程が崩れれば蟻(あり)の一穴となり、「骨太2006」は間違いなく瓦解する。

 歳出削減額が減った分は歳入、つまり増税で埋めればいいという考えもあろう。現実に財政規律を緩める族議員たちの間には「今秋の税制抜本改革での消費税の大幅引き上げ期待がある」(自民党幹部)という。それは危険だ。

 「骨太2006」は想定増税幅を圧縮するため、厳しい歳出削減だけでなく不自然な高い成長率を設定し税の自然増収を見込んだ。そのシナリオは米サブプライム問題などの影響で完全に狂い、増税幅の拡大が余儀なくされる。

 来年度からの基礎年金国庫負担割合引き上げの財源確保さえまだできていないのだ。大体がねじれ国会下で人気取り競争に奔走する族議員たちに、大幅増税を国民に求める覚悟などあるまい。

 歳出を緩めて大幅増税が皮算用に終われば、2011年度黒字化という最初の目標でつまずく。実際、民主党だけでなく与党内にもその先送り論が高まっている。

 ◆団塊の世代の影響力

 「2011年度」は簡単に動かせない重い意味を持つ。2006年から5年という単なる区切りの年ではない。団塊の世代は2012年度に年金受給年齢に達し、社会保障費が急増時代に入る。つまり、大転換前夜なのである。

 それまでにせめて歳出を税収など通常の歳入でまかなえるよう基礎的収支を黒字化しておかねばならない。でないと、国民の負担は加速度的に拡大してしまう。

 680万人に上る団塊の世代の影響力は実に大きいが、欧米とて同じだ。戦後ベビーブーマー世代を軸に人口動態を分析し、長期の財政運営計画を立てている。

 しかも、団塊の世代の高齢化は政治的にも多大な影響を及ぼす。すでに有権者の半数以上は50歳超となっており、投票率も若年層よりはるかに高い。政治はどうしてもこうした世代におもねる傾向にならざるを得ない。

 団塊の世代が2012年に高齢者の仲間入りをすると、その立場からの政治的発言力が一気に増す。これに政治の人気取り競争が加わったら手に負えなくなる。

 いかに「2011年度」が重要かがわかろう。近くまとまる「骨太2008」は「骨太2006」を再確認して歳出削減を徹底することだ。その上で必要になる増税の道筋を秋の税制抜本改革で具体化していきたい。(いわさき けいいち)

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