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【正論】「胡訪日」以後 いま、中国と「共感」の価値は 東洋学園大学准教授・櫻田淳 (3/3ページ)

2008.5.15 03:27
このニュースのトピックス正論

戦後日本が生んだ環境

 目下、中国政府は、北京五輪を経済、軍事両面での隆盛に裏付けられた国威発揚の機会ととらえているかもしれない。けれども、日本にとっては、戦後、1964年の東京五輪までの20年は、ただ単に「経済復興」のために費やされたのではなく、自由な社会の恩恵の下で『鉄腕アトム』や『ゴジラ』を世に登場させた歳月にほかならなかった。1990年代以降、カンボジアからイラクに至るまで海外に派遣された自衛隊部隊の活動ですら、その趣旨は、軍隊の「威容」を誇示するのではなく、人々の「共感」を得ることであった。

 そうした戦後の歳月こそが、日本が「世界に最も良い影響を与えている国」の筆頭に挙げられる環境を醸成したのである。もし、「日中友好」を誠実に願うのであれば、この戦後日本の足跡の意味こそが、中国に伝えるに相応(ふさわ)しいものであるかもしれない。

 「国家の大なるを恃(たの)み、民人の衆(おお)きを矜(ほこ)り、敵に威を見(しめ)さんと欲する者、之を驕兵と謂(い)う。兵の驕する者は滅ぶ」とは、古代中国の史書『漢書』「魏相丙吉傳」に記され、後世の史書『資治通鑑』にも再録された一節である。

 他国の人々の「共感」を顧慮せずに自らの「威」だけを示す姿勢は、自らを滅ぼす。この古人の智恵に中国政府が留意できるのか。

 皮相な「対中強硬」姿勢を弄(ろう)するよりも、このことを冷静に注視するほうが、日本の人々にとっては、賢明な対応であろう。(さくらだ じゅん)

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