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【東亜春秋】編集委員・山本勲 東亜共栄の大戦略を構築せよ

2008.4.11 03:14
このニュースのトピックス中国

 日本を取り巻く東アジアのパワーバランスが歴史的な変動期を迎えている。中国の急膨張やロシアの復活が進む一方、米国の影響力は陰り始め、とりわけ日本の“地盤沈下”が甚だしい。日本が国内政争に明け暮れている場合では、到底ない。与野党、官民が知恵を絞り、日本主導で東亜共栄の大戦略を構築、展開すべき時だ。

 米太平洋軍のキーティング司令官が先月11日の上院公聴会で行った証言ほど、東アジアの地殻変動を端的に物語るものはない。同司令官が昨年5月に訪中した際、中国海軍幹部から米中が太平洋の東西を「分割管理」する構想を提案された、というのだ。

 この海軍幹部は「われわれ(中国)が航空母艦を保有した場合」として、ハワイ以東を米国、以西を中国が管理することで「合意を図れないか」と打診したという。キーティング司令官は「冗談だとしても人民解放軍の戦略構想を示すものだ」と述べている。

 荒唐無稽(むけい)と受け止められたためか、日米をはじめ国際社会の反応は至って鈍い。しかし毛沢東以来の中国共産党政権の戦略展開を振り返ってみれば、これは相手の反応を探るため周到に準備した“観測気球”とみるべきである。

 一見、途方もないホラやハッタリ、冗談話で相手を攪乱(かくらん)し、じわじわと自分のペースに陥れるのは彼らの「お家芸」だからだ。

 毛沢東は「原爆は張り子の虎」と歯牙にもかけぬふりを装い、ひそかに核開発に全力を挙げた。トウ小平は尖閣諸島問題で「われわれは知恵が足りない。次の世代に委ねよう」と低姿勢に出る一方、1992年には尖閣諸島などを中国領と規定した領海法を制定した。

 国力を急拡大した現在は尖閣諸島の領有権はもちろん、「沖縄トラフ(海溝)までが中国の排他的経済水域」との法外な主張を譲らない。日中の東シナ海ガス田協議では、日本が日中中間線の日本側で石油の試掘を始めれば「軍艦を出す」と恫喝(どうかつ)するありさまだ。

 力の差が大きい米国に対しての言動はまだ控えめだ。それでも先の海軍幹部発言は、テロとの戦いやイラク戦争で疲弊した米国の足元を見透かすかのようだ。

 中国海軍が空母を保有するのもそう先のことではない。防衛研究所(防衛省のシンクタンク)は今年の年次報告書で、「2年後に保有する可能性」を指摘している。太平洋の米中分割管理提案は、決して冗談や絵空事ではない。

 もしそうなれば「中華民族の偉大な復興」をめざす共産党政権の覇権はハワイ以西を覆う。台湾を併合した清朝最盛期のように、韓国・北朝鮮や沖縄が「朝貢」を復活するかもしれない。尖閣諸島や東シナ海の日中中間線が守れないのは言うまでもない。

 日本は今こそ中国の膨張を抑える中長期の大戦略を構築すべきだ。韓国の李明博政権が日米韓の結束再強化を唱え、日韓自由貿易協定(FTA)の締結に積極姿勢を示しているのは一つの好機だ。

 台湾に対中融和派の馬英九政権が来月発足することには、懸念の声もある。だが馬氏は経済再生を唱えて総統に当選、日本などとのFTA締結をめざしてもいる。これを機に日韓台のFTA締結を進め、連携をさらに強化してはどうか。中国の膨張に歯止めをかけるには日米韓台の合従が大事だ。(やまもと・いさお)

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