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【主張】日本の安全保障 首相は「国益」戦略語れ 民主党は現実姿勢に転換を
国の根幹をどうするか、この青写真を福田康夫首相はほとんど語っていない。衆参両院の判断が異なるというねじれの中、基本的な枠組み作りを一方的に主張することは現実的ではないとの思いがあるのかもしれない。
だが、日本丸の舵(かじ)を取る船長として、この国をこうするという基本計画を示さなくてはならない。その役目を担う人はほかにいない。
優先すべき課題は国の安全保障である。今国会の最重要法案である新テロ対策特別措置法案を衆院で再議決、成立させるのは当然だ。同時に国際社会との連帯行動をどう具体化し、日米同盟をより実効あらしめることこそ、首相が実現すべきテーマである。
そのためには民主党が国家安全保障を政争の具にすることをやめ、現実的な姿勢に転換することが欠かせない。それにより政権を目指す政党として信を集めよう。日本の平和と安全のため、党派を超えて自民、民主両党が協力できるかどうかで一国の停滞と繁栄のいずれかが決まる。
インド洋におけるテロとの戦いから日本が脱落して丸2カ月が過ぎ、日本の信頼性は損なわれている。
アジア太平洋安全保障担当の国防次官補に指名されたジェームズ・シン筆頭副次官補は昨年12月18日の上院軍事委員会に事前提出した書面で、海上自衛隊の給油活動の中断を「後退であり、失望」と表明した。
≪リスクの分かち合い≫
不利も被っている。原油の9割を中東に依存する日本にとって多国籍海軍がパトロールする海域はシーレーン(海上交通路)と重なり合う。ところが給油艦撤収に伴い、海自がバーレーンの多国籍海軍司令部から連絡官を引き揚げた以降、海上テロなどの情報を共有できなくなっている。いざという場合の備えはなにもない。シーレーンの安全は危うさの中にある。
リスクを分かち合い、共に汗をかくことが国際共同行動の核心だ。新テロ法案の成立と給油支援の再開は、現在の日本にとって喫緊の課題ではあるが、それにとどまってはなるまい。
日本が自らの能力をどう生かすかが問われている。シーレーンを監視・防衛する能力を保持している国は世界でも限られ、約100機の哨戒機を持つ日本はそうした国の一つである。
一方で長期化し、困難を極めるテロとの戦いに世界約40カ国が参加しており、犠牲者は少なくない。
日本にとって国際社会との連帯を強めるため、乗り越えるべきハードルは低くない。武力行使と一体化する行動を禁止する憲法解釈の壁や絶対安全主義の風潮も色濃く残る。
しかし、他者に依存する一国平和主義的な「甘え」はもはや通用しない。自ら汗をかき、リスクを共有するという「覚悟の戦略」が必要なのだ。
≪集団的自衛権認めよ≫
それは日米同盟関係にもあてはまる。その一端は、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが米国に向いている場合、日本は集団的自衛権の行使にあたるので撃ち落とせないとする政府見解に表れている。この見解では同盟が破綻(はたん)しかねない。平成17年、自民党の新憲法起草委員会安全保障小委員長として、自衛軍の保持と集団的自衛権の行使を容認する案をまとめた首相はよくご存じだろう。
こうした見解を見直すため、安倍晋三前首相が発足させた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は報告書を出す予定だ。
首相は、国民の安全を守るため、集団的自衛権を容認して日米共同防衛体制を揺るぎないものにしてほしい。
また首相は官房長官時代の平成14年には多国籍軍の後方支援に道を開く国際平和協力懇談会の報告書を提出させた。これは民主党が昨年暮れ、参院で審議入りした新テロ法案の対案に、自衛隊の海外派遣に関する恒久法整備の必要性を明記したことと響き合う。
新テロ法案の期限は1年しかない。期限切れでまた同じ不毛な対立劇を繰り返してはなるまい。
自民、民主両党は、日本が参加できる国際共同行動の範囲はどこまでか、自衛権の行使をどうするか、などを詰める責務がある。国益を実現する枠組み作りこそ、福田首相と小沢一郎民主党代表がそれぞれ語るべきことだ。