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【わたしの失敗】元首相・細川護熙さん(69)(2)
■料亭とバッジ業界の抗議
平成5年8月、38年間続いた自民党支配に終止符が打たれ、8党派連立による細川政権が誕生した。お茶の間はまず、細川の若々しく清新なイメージにくぎ付けとなった。例えば、立ったまま行う首相会見。今では当たり前の光景だが、当時はペンで記者を指名する姿とともに、「ホワイトハウス流」などと話題になった。同年の晩秋、米シアトルでのAPEC首脳会合でも、メディアは肝心の内容より、首相のマフラー姿に注目。繰り返し流された映像をおぼえている人も多いだろう。
「寒かったので、娘から借りたマフラーを巻いただけ。なんでそんなに騒ぐのか、わからなかった」と本人。「何かにつけて『パフォーマンス政治』と自民党にたたかれましたね。普段の自分のスタイルでやっていただけなのに」と振り返る。
一方で、自ら意識的に進めた行動も。1つは「料亭政治の廃止」。密室のイメージを避け、会合はホテルなどを利用した。さらに「国会の外では議員バッジを外す」と宣言。議員バッジを「国会議員の特権の象徴」と断じた。ところが、これが思わぬ波紋を呼んだ。
まずは料亭の業界団体からの苦情。続いて女将の“伝言”があちこちから託された。「料亭というのは悪いところじゃございませんからね。細川さんによくおっしゃっておいてください」−と。
「私は料亭に行かないとか、料亭が嫌いだとか、まして料亭が悪いと言ったことは一度もない。悪いのは隠密で不明朗で、国民生活と乖離(かいり)した『料亭政治』と言ったまで」と細川。折しも官官接待に批判が集まった時期で、料亭には閑古鳥が鳴いた。恨み節に仕方なく「料亭に行く代わりに、料亭から仕出料理を取って総理官邸で客をもてなしたことも。まあ、今でも料亭には恨まれているようです」
バッジ業界も黙ってはいない。「特定の業界の存在意義を否定するかのごとき発言は許されない」と抗議を寄せた。自民党の代表質問でも「あなたのバッジ無用論が、不況にあえぐ全国のバッジ業界に大きな打撃を与えた」と糾弾された。
細川は言う。「料亭政治の廃止も、議員バッジという権威をひけらかさないことも、いまなお正しいと思っている。でも、この経験で、総理の地位、あるいは政治そのものが、いかに国民の無数の利害の網の目に乗っているのかを自覚できた」
「やはり、政治家の言葉には細心の注意が必要ですね」。元政治家としての実感だ。
(黒沢綾子)