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【古典個展】立命館大教授・加地伸行 すんなり進まぬ近畿州議論
謹賀新年。
いよいよ今年は道州制の議論が浮上してくる。しかし、近畿州だけはすんなりと話が進まず、もめることであろう。
と言うのは、原案による道州の分けかたを見ると、近畿州以外、中心都市のトップはすぐ分かる。例えば、東北州は仙台、と。
これに反して、近畿州は京・阪・神と並んでいて、どこがトップと決めきれない。
例えば、女性代表自慢。京都と言えば舞妓(まいこ)・芸妓(げいこ)。神戸ならば広く考えて宝塚スター、タカラジェンヌだ。大阪はどやねん。そんなもん、決まってる。だれや。天童よしみや。負けてられるかい。なんなら大阪のオバチャンもおるで。
3都それぞれが自信を持っているだけに、行政・経済・文化・大学とどれを取っても互いに譲らないであろう。
明治維新以後、近代工業の発展によって、工場を多く作っていった大阪市が指導的地位を得たことは言うまでもない。
しかし、この60年、政治が経済に深くかかわるようになってからは、大阪市に置いていた本社を東京に移す会社が激増した。
その結果、大阪市の経済的地盤沈下はいちじるしい。この経済の減速は当然、文化に反映される。
ところが、京都市は元気なのである。俗に「京都企業」と言われるが、独自の技術の特性を発揮し、それぞれがその分野のリーダーとなっている。もちろん、本社は京都市に置いていて、東京や大阪がなんやと、でーんと構えている。
この京都の商法は大阪商法と異なる。例えば、せんべい屋。京都の老舗のせんべい屋は、1日に五百枚だけせんべいを焼く。ファンがいるので必ず売り切れ、その日は閉店。それ以上は焼かない。だから、景気が良かろうと悪かろうと関係なく、しぶとく生き残れる。ミヤコ千年の知恵である。
ところが、大阪は五百枚売れたら、次の日は六百枚焼く。そして七百枚、八百枚…と拡大していって、最後はアウト。中国人と同じ商法である。
神戸は、端(はな)からハイカラ趣味。京都の古風と好対照。
「阪神間」と言うけれども、実は大阪は抜きで西宮・芦屋・神戸・宝塚を指しての阪神間のことである。それが神戸の姿。
その一帯は、収入も地位も高い人がそれこそ数多く集まっているので、なんとなく雰囲気が違う。ちょっとした喫茶店に入っても、コーヒー代はいい値段。
わが大阪は、古風もハイカラもない。それに昔を大切にしない。西鶴の墓はきちんと守られているが、近松門左衛門の墓はビルの片隅に辛うじて残るだけ。
いったい今の大阪市は何をウリにできるのであろうか。けれども江戸時代以来のプライドだけは続いている。となると、京・阪・神3者の話し合いなど、まず無理。
そういうことが目に見えている以上、京・阪・神3市は州から独立し、それぞれ個別独立する特別市という制度を求め、その線の単立で行くほかあるまい。そして近畿州の中心トップは奈良市ということになるだろう。
『論語』述而篇に曰(いわ)く、「己(おのれ) 立たんと欲すれば、〔先に〕人を立つ。己 達せんと欲すれば、〔先に〕人を達す」と。
(かじ のぶゆき)