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【産経抄】11月14日
撤回したからといって、すんだことにはならない。「関東大震災が起きればチャンスになる」。兵庫県の井戸敏三知事(63)の発言は、失言のレベルを超えている。寅さんのせりふを借りれば、「それをいっちゃあ、おしまいよ」。
▼きのうの謝罪会見では、こうものたもうた。「チャンスという言葉の『誤解力』のほうが大きかった」。つまり、発言の真意がわかってもらえなかった、というのだ。小学生だって、「チャンス」に、起こってほしい気持ちがこめられていることを、知っている。「誤解」のしようがないではないか。
▼寅さんといえば、映画『男はつらいよ』シリーズで、いつも他人が幸福をつかむ手助けをしてしまう。悲しいかな現実には、寅さんのような生き方は難しい。「他人の不幸は蜜(みつ)の味」。小欄だって、そんな気持ちが心の奥底のどこかにある。
▼一方で、それを恥ずかしいとも思う。おそらく大多数の人も同じだろう。まして、13年前の大震災によって、親族や知人を失い、家をなくし、今も心の傷を引きずっている人たちが、関東大震災の発生を期待するような発言を、口にするわけがない。
▼それどころか、震災の翌年から副知事、7年前からは知事として復興に取り組んできたリーダーの暴言を、誰よりも情けない思いで聞いたはずだ。「やっぱり経験してない人には、わからんのかなあ」と。
▼確かに、首都機能が関東に一極集中していることには懸念がある。地方分権について、積極的に発言してきた知事には、関西復権へのやむにやまれぬ思いもあろう。だからといって自らの発言について、「わかる人にはわかってもらえたはず」などと期待しない方がいい。それこそまったくの、「誤解」だ。
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