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【分権の壁 第1部 歪みの構造】(上)かき消された警鐘 (1/3ページ)

2008.4.30 01:38
このニュースのトピックス国会

 少子高齢化に伴う社会保障費の増大が国民生活を圧迫する中、「小さな政府」をうながす地方分権の推進が重要な政治テーマになっている。だが、近隣の自治体がひとつの行政単位として再出発した「平成の大合併」や、国と地方の税財政を見直す三位一体改革の結果、いたるところで歪みが生じ、危機に瀕する自治体が増えている。地方に何が起きているのか。「分権の壁」をレポートする。

 「丹波篠山(ささやま)の黒大豆」で知られ、来年で築城400年を迎える城下町、兵庫県篠山市。「街道をゆく」で司馬遼太郎が「封建のころの静かさとたたずまいを遺(のこ)し…」と記したように、人口4万6000人の静かな街だ。そんなどこにでもありそうな自治体が、「優等生」として一躍全国の注目を集めた。

 「平成の大合併」(※(1))第1号として平成11年4月1日、旧篠山藩(多紀郡)だった篠山、今田(こんだ)、丹南、西紀(にしき)の4町が合併して篠山市が誕生した。地方分権のモデルケースとなった篠山市には、連日、全国自治体からの視察が相次いだ。その数は計約1000団体、1万2000人に及び、「篠山詣で」との言葉も生まれた。

 旧篠山町長から初代市長となった瀬戸亀男氏も一躍ときの人となった。

 合併後2年あまりが経過したころに講演した際の記録「今、なぜ合併か」(公人の友社)には、バラ色の未来を期待させる言葉が散りばめられた。合併推進のスローガンは、「サービスは高い方に、負担は低い方に」。瀬戸氏は自信たっぷりに語っていた。

 「合併してまずかったということは今のところ私自身は考えていません」

    ×  ×

 合併10年目を迎えた篠山市の今はバラ色とはほど遠い。

 市のボランティア活動に取り組む主婦(63)は「新しい施設がいろいろできて便利だけど、借金が多いんでしょ?今春も市職員の1割近い60人近く退職したみたいですよ」と嘆く。

 昨年2月に就任した酒井隆明市長(53)は就任後、「財政運営は立ち行かなくなる」と宣言した。財政が破(は)綻(たん)して財政再建団体(※(2))となる「第2の夕張」が現実味を増してきたためだ。

 優等生が転落した原因は明らかだ。国からもらった「アメ」の使い方を間違えたのだ。合併に伴う優遇措置として地方自治体に与えられた合併特例債(※(3))。この巨額予算を、採算のとれない建造物(ハコモノ)に投入した。

 中学校の移転改築に25億円、斎場に19億円、図書館に17億円、市民センターに13億円…。特例債は全国で初めての適用だったこともあり、篠山市は「使わなければ損だ」(市幹部)とばかり、積極的に活用して建設ラッシュに沸いた。

 もう一つは、地方の自立を促すはずの三位一体改革(※(4))の結果、地方交付税(※(5))が予想以上に削減されたためだ。

 「1つ1つの施設がぜいたくざんまいだ。財政収支見通しの誤りとしかいいようがない。行政改革どころか、逆に図体と借金ばかりが大きくなった」

 負の遺産を背負った酒井市長は憤りをみせる。気が付けば、合併特例債を活用した事業は231億円に達し、市の借金は1000億円規模に膨らんだ。

 元市議の森本長寿氏(74)は、「合併直後からハコモノ行政をやめて使い方を見直すべきだと市議会で訴えたが、聞き入れられなかった」と振り返る。合併特例債も借金であることに変わりはない。冷静に考えればだれでも分かるこうした指摘を、合併特需と全国的な注目を集めた当時のムードがかき消した。

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