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【明日へのセーフティーネット】現場はいま(4)介護疲れ殺人 (1/2ページ)

2008.4.5 09:00
このニュースのトピックス「明日へのセーフティーネット」

人生考える余裕がほしい

 平成18年6月の京都地裁。母親殺害の公判で被告人質問に立った男性(56)は、自らが殺害した母親=当時(86)=への慈しみの言葉を繰り返していた。

 「ハイハイで近づいてきた母を抱き上げると、強く抱きしめてくれる。そんな老いていく母がかわいくて」

 傍聴席からは、すすり泣く声が聞こえた。裁判官の目も真っ赤だった。

 男性が京都市伏見区の桂川河川敷で母親の首を絞めて殺したのは18年2月1日未明。自分も首を切って自殺を図ったが、死にきれなかった。

 男性は、父親が死亡した平成7年からアパートで認知症の母親と2人暮らしだった。母親の認知症が進んだ平成17年4月ごろから、深夜に起き出す母を世話する昼夜逆転の生活をしていた。当初はデイサービスを利用していたが、自分の手で母の介護をしようと退職。介護と仕事を両立できる職を探したがなかなか見つからなかった。

 職人だった父の教えを守り、「他人に迷惑をかける」ことを潔しとはしなかった。親族に無理もいわず、2人で生きようとしたが貧しさから逃れられず、すがろうとしたのが生活保護だった。3回にわたり福祉事務所を訪れ相談。しかし、「失業保険の収入があるので生活保護は受けられない。がんばって」と断られた。

 失業保険が切れ、収入は無くなった後も男性は福祉事務所の窓口を訪ねることはなかった。その一方で、「母だけには食べさせてやりたかった」と、自分の分を2日に1回にして母の食事を作った。公判で当時の心境を「本当に苦しい。骨がきしむようななか、息をこらして耐えるだけだった」と振り返った。

 母親の命を奪い、自分も死のうと決めた男性は、最後の親孝行にと、母を車いすに乗せ、思い出の河原町三条で繁華街を回り、犯行現場へと向かった。

 思うところがあったのだろう。裁判長は介護疲れ殺人が相次ぐ理由を男性に聞いた。男性は「行政は、もっとやわらかい対応をしてほしい。(人生を)考える余裕、時間をください」と答えた。判決は懲役2年6月、執行猶予3年(求刑・懲役3年)。裁判長は「問われたのは、日本の介護制度と生活保護行政と言っても過言ではない」とつけ加えた。

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