ニュース: 生活 RSS feed
【人生戦略の立て方】経済評論家・勝間和代 日本人は“戦術”ばかり
「人生にも戦略が必要である」、これが私の強い主張です。「戦略」というと、企業が利益を出すためや、あるいは、戦争のような場面で敵に勝つため、といったような荒々しい状況を想像しがちです。しかし、私たちがよりよい人生を過ごし、周りの人に貢献し、周りの人に感謝をして、毎日をワクワク、ドキドキと過ごすために、生活の中にこそ、人生の中にこそ、戦略が必要なのです。
なぜ、人生に戦略が必要なのでしょうか。それにはまず、「戦略」の定義を理解する必要があるでしょう。戦略は(1)何か特定の目標を達成するために(2)統合的な施策を通じて(3)資源を効果的に配分・運用する技術、のことを言います。3つの要件をそろえることで初めて戦略として機能をしていきます。多くの日本人、日本企業は、決められた目標に対して配分された資源の範囲内で、ベストを尽くすことはたいへん得意です。しかし、どうやって目標を定めるかとか、資源の配分自体を見直すか、について不得手だと思える場面がしばしばあります。すなわち、戦術は行っているが、戦略は行っていないのです。
今年3月20日、私は麻生首相が招集した有識者会議のメンバーとして、雇用と能力開発について、首相や閣僚の方々と議論をする機会がありました。当時は派遣切りが社会問題となっていました。その議論の中で私は麻生首相の「製造業の派遣解禁は、製造業の競争力と雇用を守るために必須だったのだから仕方がない」という発言に驚かされました。
私は思わず、「それだけでは不十分だったのでは? 本当に必要なのは外需と内需のバランスの悪さ、特に内需の生産性の低さであり、その部分を解消しない限り、外需の部分だけで解決を図ってもしかたがない」と反論してしまいました。なぜなら、「派遣社員の解禁でコストを引き下げる」というのは戦術レベルの施策であり、戦略レベルにおいては、問題点が多かったからです。結局、産業構造も変えなかったし、人材的な資源としても若者の意欲や能力を無駄遣いしてしまったからです。
このことは個人でもまったく同じです。戦略がないまま、「がんばればなんとかそのうち、いい時代が来る」「努力すれば報われる」というように無理なサービス残業をしながら、生産性が低い職場において、長時間労働で歯を食いしばって働いてしまっています。自分の戦略的な目標もなく、長時間労働で自分たちの資源の無駄遣いをしてしまうと、「やらされ感」が強くなり、心や社会のバランスを欠いてしまうのです。結果として日本は幸福度が世界で60位なのに、自殺率は世界で8位という、非常に不名誉な数値になってしまいました。
この不名誉な数値を改善するためには、私たち一人一人こそ、人生戦略をもつことが必要なのです。しっかりとした目標を持ち、その目標に向かってさまざまな経験を重ね、トライアンドエラーからよりよい資源配分を行えるようにする、すなわち「人生戦略」を自分の力で展開できるようになると、やらされ感がなくなり、日本全体の閉塞(へいそく)感の打破につながる力になると考えています。今後、人生戦略をさまざまな角度から掘り下げていきます。(かつま かずよ)