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【Re:社会部】「生ける聖人」の心
取材でお世話になった方から『ドミンゴス中村長八神父』(ペドロ大西著)という小さな本が送られてきました。戦前にブラジルへ渡った日本人初の海外宣教師、中村長八の伝記です。
中村神父は慶応元(1865)年、長崎・五島列島で隠れキリシタンの家系に生まれました。58歳だった大正12(1923)年、日本人移民を精神面から支援しようと、志願してブラジルへ渡りました。当時の移民は新天地を求め未開の地でくわをふるう開拓者でした。神父は重いトランクを背負い、徒歩や馬で広大な荒野を巡回しました。
《今日まで6回落馬しました。列車の脱線は1回経験しました。革命も1度起こりました。その他のことはすべて順調です》同書の神父の手紙にはこうあります。
質素な身なりで移民を勇気づける神父はいつしか「生ける聖人」と呼ばれました。太平洋戦争直前の1940年、75歳の生涯を閉じましたが、昨年移民100周年を迎えたブラジル日系社会のカトリック信徒らは、ローマ法王庁が中村神父へ「聖人」に次ぐ「福者」の位を授けるよう運動を続けています。
中村神父はかつて、わが国の市井にいた誠実な日本人の一人に過ぎません。ひるがえって現在、無差別殺人事件や食の偽装、捏造(ねつぞう)といった日本人の「劣化」を目にするたび、こんな日本人たちがいたことを、思い起こしたいと思うのです。(徳)
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