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【探訪】南国の時を刻む水牛車 沖縄県・由布島
真冬であることを忘れるほど暖かな日の光が降り注ぐ。ゴトゴト、ゴトゴト−。遠浅の海を水牛車が悠然と渡る。心地よい振動とさわやかな南国の風、そして“おじい”の三線(さんしん)が奏でる島唄が南の島特有のゆったりとした、やさしい時間の流れに溶けていく。
手付かずの原生林が島の90パーセントを占める沖縄県西表島。その東海岸に隣接する由布島で今年の干支(えと)である牛が活躍している。2つの島の間に広がる約400メートルの海は満潮時でも水位は1メートルほど。両島の移動手段として水牛車が利用されているのだ。所要時間は約10分。
由布(ゆぶ)島は竹富島や黒島からの移住者が多く、最盛期には60世帯の家族が暮らしていた。しかし、昭和44年の台風直撃で壊滅的な被害を受け、ほとんどの島民が西表島へ。島に残ったのはわずか3世帯の老夫婦。その中の西表正治さん、ハツさん夫妻はいつか人々が戻ってくる日を夢見て島の楽園化に着手した。周囲2・15キロ、約12万平方メートルにわたる土地を開墾し、来る日も来る日もヤシの苗木を植え続けた。
昭和56年、島は「由布島植物楽園」として開園した。正治さんがヤシを植え始めてから10年、入植から34年の時がたっていた。島は現在20種類ものヤシの木のほか、ハイビスカスやブーゲンビリアなど亜熱帯の花々が咲き乱れ、年間27万人もの観光客が訪れている。
「孫の僕たちには優しかったけど、とにかく頑固な人でした」と話すのは同園の副支配人を務める西表晋作さん(32)。
「楽園を目指した祖父母の遺志を継いで、これからもたくさんの人に安らぎを与えられるような島をつくっていきたい」
由布島をこよなく愛した正治さん、ハツさんのやさしい思いを乗せて今日も水牛車はゆったりと海を渡る。(写真報道局 山田俊介)
「探訪」の動画は「産経ポッドキャスト」http://podcast.sankei.co.jp/でご覧になれます。



