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【話の肖像画】人生捨てたもんじゃない(2)作家・重松清さん
■幸せの可能性 小説で提示
−−高度経済成長期のような“明るい未来”を描けないような時代。大人は子供たちに「いろんな明るさ(幸せ)」があることを提示しなければならない、という話でしたね
重松 昔なら、一生懸命働いてお金持ちになって、家を買って、クラウンに乗る…。そんな幸せをみんなが描いていました。でも、今の日本はどうですか。特に昨年後半以降の金融危機で雇用問題が大変なことになっている。クビを切られて地下道に寝て、所持金がいくらも無くなって、もう「罪でも犯して刑務所に入って冬を過ごしたほうが楽だ」と考える人がいても不思議じゃないでしょう。
−−働きたくても仕事がない人もいますからね
重松 こういうときこそ、宗教が求められるのかもしれません。ただ、日本の場合、オウム事件の後遺症が今になって効いてきている気がします。また、政治には本来、「現実の幸せ」を提示できる機能があるでしょう。じゃあ小説にできるのは何か? 「いろんな幸せがある。探せば見つかるよ」っていう可能性ぐらいは提示することはできると思うのです。
−−「いろんな幸せ」がある。例えばお金だけが幸せを量る価値観ではない。世の中には多様な価値観がある、と思うことができればいいんですよね
重松 少し前までは、それぞれの価値観、個性を尊重する教育をやったはずですよ。学力を犠牲にしてまでそれをやったでしょう。
それなのに今の子供たちが何をやっているか、といえば、「空気、読めよ」なんです。いろんな空気があっていいよ、と教えたはずなのに、子供たち自らが場を乱すことを嫌う。こうなるともう、「日本人論」になってしまいますね。
−−うーん
重松 そんなときに、小説や映画が“空気の揺らぎ”を教えてくれることがあるんです。動かないと思っていた空気が実はそよぐんだ、とね。
僕が好んでいう言葉は、「人生捨てたもんじゃない」。何が“拾える”かは分からないけど、生きていれば、きっといいことある。ただ、僕の小説はハッピーエンドじゃありません。幸せを探す難しさも知っているから、無責任なハッピーエンドにはできない。だから、「誠実に中途半端に終わる」(苦笑)。(喜多由浩)
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【プロフィル】重松清
しげまつ・きよし 昭和38(1963)年岡山県生まれ。平成13年「ビタミンF」で直木賞を受賞。いじめ、不登校の問題や家族のきずなをテーマにした作品が多い。

