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【話の肖像画】人生捨てたもんじゃない(1)作家・重松清さん
■「いじめ」当事者へのメッセージ
−−いじめの問題をテーマにした作品が多い。表現が非常にリアルですね
重松 僕の時代にも、いじめはありましたから、「これをやられたらきついなぁ」と考えてみたり、(高校生の)娘から話を聞くこともあります。ただ現実のいじめはもっとひどいですよ。僕は凄惨(せいさん)なものにならないようにギリギリのところで抑えているぐらい。
でもね、よく「いじめなんかに負けるな」って、軽く言う人がいますけど、そんなもんじゃない。多感な中学生が「死」を考えるほどのことが起きているわけですよ。小説まで軽くなってしまったら、本当に苦しんでいる子供が救われない。いじめている子供に伝えるものもなくなっちゃうでしょう。僕は小説のネタにしているわけではなく「メッセージ」を伝えたいために書いているんですから。
−−いじめは確かに昔からあった。でも現象面では随分、変わったのではないですか
重松 それは、携帯電話とインターネットのせいです。これがなかった時代は学校でいじめを受けていても、家へ帰れば取りあえず“別の世界”に逃げ込めた。塾など学校以外の居場所を持つことで救われるということもあったのです。
今はそうじゃない。携帯とネットは、体がどこにあろうと、どこまでも追いかけてきます。昔のように、ガキ大将が一発殴って、「さぁ、これでおしまい」というような単純なものではなくなっているのは確かですね。
−−いじめを苦にした子供の自殺も後を絶ちません
重松 「今は(いじめで)苦しいかもしれないけど、大人になったらきっといいことがある。未来がある」って信じることができれば、「死」は回避できる。
でも、今の時代には、苦しみに耐えるための“担保”がありません。僕たちの親は経済成長に支えられて、子供たちに明るい未来を見せることができたが、今はそうじゃない。だったら、明るさの定義を変えるしかありません。「探せば、いろんな明るさがあるんだよ」ってね。(喜多由浩)
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【プロフィル】重松清
しげまつ・きよし 昭和38(1963)年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。出版社勤務、フリーライターなどを経て、平成3年「ビフォア・ラン」で作家デビュー。11年「ナイフ」で坪田譲治賞、「エイジ」で山本周五郎賞、13年には「ビタミンF」で直木賞を受賞した。いじめ、不登校の問題や家族のきずなをテーマにした作品を数多く送り出している。2女の父親。

