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【産科医解体新書】(15)「無事に産まれる」を心の支えに

2008.12.3 08:23
このニュースのトピックス美容・コスメ

 僕らがお母さんと赤ちゃんにできることは実に些細(ささい)なことだけです。赤ちゃんのために一番貢献しているのは、言うまでもなくお母さんです。

 妊娠中は、いろいろな面で母親は赤ちゃんのために犠牲になっています。母親の命まで取られることはまれにしろ、「胎児のために」という大義名分の下、母親の行動にはいろいろと注文をつけられます。お酒が好きな人がお酒をやめるのも、赤ちゃんのためには当然だと誰もが思うでしょう。健康な妊婦さんはもちろん、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などを合併して入院している妊婦さんは、おなかの赤ちゃんのためにさまざまなことが制限されます。

 健康な人が風邪をひいて1、2日寝ているだけでも辛(つら)いわけですから、数週間にわたって入院しなければならない妊婦さんのストレスはなおさらです。しかも、入院しているといっても、母体に症状(病識)がないことがほとんどなので、妊婦さんが治療の意義を見いだす実感に乏しくなります。

 多くの母親たちは弱音も見せずに、ひたすら自分の子供のために耐えています。それが自分の子供のためだと分かっているからです。それでもまれにストレスが爆発してしまう方がいます。医療側の人員配置がもう少し精神的なケアができる態勢なら対応できるのですが、人手不足の現状では難しく、心のケアまで手がまわりません。

 今後も百パーセントの提供は難しいでしょう。最後は、自分の子供のために自分で頑張ってもらうしかない。われわれも心苦しいですが、治療には必ず終わりがあることを忘れないで、耐えていただくのが今できることです。先輩の一人は「産科はほとんどがハッピーエンドだから、一緒に頑張ろう」としばしば妊婦さんを励まします。

 「赤ちゃんが無事に産まれて当たり前」と無邪気に考えるのは楽観的過ぎますが、辛い立場にいる妊婦患者さんにとっては、この言葉が逆に精神的な支えになっている面もあります。(産科医・ブロガー 田村正明)

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