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【わすれもの−証言・広島「空白の10年」】(5)資料館で知った「きのこ雲」 (1/3ページ)
昭和30年、開館して間もない原爆資料館(広島市中区)を訪れた森岡正勝さん(79)=広島市南区=は、1枚の写真に目を奪われた。地面からわき上がる不気味な雲。つばを飲みこむ。写真の説明文には『原爆投下後に広島に発生したきのこ雲』とあった。
「こんなにすごい爆弾だったのか」。隣を見れば、ともに訪れた友人も目を丸くしている。原爆の惨禍を経験して10年、ろうあの森岡さんが初めて「きのこ雲」という言葉を知った瞬間だった。
初めて知る展示内容ばかりだった。あの日、自分たちも体験したことなのに。「空白の10年」の間、ろうあ者は何も知らないままに放置されていたのだ。
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幼いころに、はしかにかかって聴力を失った。そのため学徒動員からはずれ、昭和20年8月6日は爆心地から2キロ余り離れた広島市皆実町(現・同市南区)の自宅にいた。家族は出かけて留守。縁側でただ1人、ぼうっと外を眺めていた。
自宅の前を歩いている中年の男性が急に足を止めた。空を見上げて何かに気づくと、一目散に走りだす。森岡さんが縁側から空を見上げようとした瞬間、閃光(せんこう)が走った。
倒壊した自宅の中からやっとの思いではい出ると、目の前に廃虚が広がっていた。何が起きたか分からない。いつも寄り添ってくれていた母を探しに、勤め先の専売局へとかけだした。
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