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【探訪】夏限定「幻の神殿」 鹿児島県大口市・曽木第2発電所遺構
緑の木々に囲まれ、水辺にひっそりとたたずむレンガ造りの建物。ヨーロッパの城か神殿の遺跡を思わせる雰囲気を漂わせている。
鹿児島県の北端に位置する大口市を縦断するように流れる川内川(せんだいがわ)。これをせき止めて造られた鶴田ダムによって誕生した人造湖・大鶴湖の湖底に「曽木第2発電所遺構」は沈んでいる。しかし、夏場の洪水に備えて鶴田ダムの水位を下げる5月から9月ごろにかけてその姿を現すところから“幻の産業遺産”ともいわれている。
発電所の1・5キロ上流に「東洋のナイアガラ」と呼ばれる曽木の滝がある。その豊富な水量に着目した日窒コンツェルンの創始者、野口遵(したがう)によって明治40年に曽木第1発電所が、その2年後に第2発電所が建設された。高さ約17メートル、幅約40メートル。発電量は当時、国内最大級の6700キロワットを誇った。
ここの余剰電力を利用して野口はチッソ水俣工場の前身である日本窒素肥料や旭化成の前身などを次々に設立。日本の化学工業発展の出発点となった発電所としての歴史的価値は高く、平成18年に国の登録有形文化財に指定された。5年がかりの大規模な補強工事も今年完了した。
昭和40年、鶴田ダムの完成とともに発電所は60年に及ぶ歴史に幕を下ろし、周辺の集落とともに大鶴湖の底に沈んだ。
発電所の近くで商店を営んでいた帖佐義光さん(85)は「家族ぐるみで付き合っていた発電所に勤めていた人たちが去っていくのは本当にさみしかった」と振り返った。
夏が終われば遺構は再び湖底へ沈み、次の夏を待つ。大口市は11月に隣接する菱刈町と合併し「伊佐市」へと名前を変えるが「幻の神殿」はこれからも水底から町を見守り続ける。(写真報道局 山田俊介)
「探訪」の動画は「産経ポッドキャスト」http://podcast.sankei.co.jp/でご覧になれます。



