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【君たちのために 元家裁判事のつぶやき】(30)薬物依存は刑罰で改善できず (1/2ページ)
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前回の続きを。このお肉屋さんの場合、実刑か再度の執行猶予かどうしても決断できず、悩みながら散歩に出かけた。店の前を通りかかったのは偶然だが、「当然閉店」と思い込んでいたのに、目にした光景は、被告人とその妻が店頭に寄り添って並び、満面の笑みをたたえながら客に愛想良く対応している姿であった。「明日から閉店するにせよ、今日1日のお客さんを大事にしよう!」と頑張っている姿勢が「ドーン」と伝わってきた。夫婦仲のよさも分かった。
私は、この店を閉鎖させ、夫婦を1年も切り離すのは残酷すぎると直感し、再度の執行猶予に決めた。翌日の判決には、実刑(即時収監)を予測して妻が下着を風呂敷に包んで持参していたが、宣告後、被告人夫婦は傍聴席で抱き合って人目もはばからずうれし泣きし、風呂敷包みを忘れて帰った。
以後約30年、覚醒(かくせい)剤の自己使用に対する対応は、司法による厳罰化が進展し、受刑者1人につき1月あたり20万円強の経費も掛かるのに、初犯とその執行猶予中の再犯分を合わせて、3年半も刑務所に入れる。しかも、薬物依存は「病気」であり、刑罰によっては改善されないから、以後の再犯も防げない。本人にとっても、社会にとっても、悲惨な状況になってきている。
ところが最近、刑務所で受刑者に対して「薬物依存離脱指導」のプログラムが実践され始めた。指導目標は、(1)薬物依存についての理解(2)薬物使用の原因や責任の自覚(3)出所後の再使用防止のための具体的方策の検討(4)出所後の生活設計−の4つである。
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