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【主張】観測船「しらせ」 南極の意義は増している
新旧で同名の日本の南極観測船が、それぞれ注目を集めている。
旧の方は、25回にわたる南極航海を終えて帰国したばかりの「しらせ」である。新の方は、先ごろ進水式を済ませた「しらせ」だ。
ともに、国や自治体の厳しい財政事情の余波を受けている。
今夏に引退する旧しらせは、引き受け手探しに苦労している。約10億円とみられる価格に加え、全長134メートル、1万1600トンの船体を維持していくには毎年、巨費が必要となるからだ。
四半世紀にわたり日本の南極観測を支えた科学遺産として、初代「宗谷」や2代「ふじ」のように係留展示されればよいのだが、関心を示した自治体も資金不足で手が届かない。スクラップの可能性があるなかで民間の引き受けに最後の望みを託している。
一方の新しらせの完成は、国の財政事情の影響で、今冬、南極に向かうのには間に合わない。予定していた船体の大型化も認められなかったという経緯もある。
外国船を借りて行う今年の南極観測は、第50次だ。初期のような緊張感や感動が薄らいでいるのは現実である。今ではインターネットで南極の様子もリアルタイムで伝わってくる。
そのうえ、南極観測での研究は地道なモニタリングなどが、かなりの部分を占めている。表面上、あまり代わり映えはしない。
しかし、南極観測は重要だ。その重みは、温暖化をはじめとする地球環境の分野で急速に増している。極地は、人間の活動が及びにくいために、貴重な観測データを提供してくれる。人類共有の財産となるはずだ。
観測は、継続することに意味がある。しかも日本の観測精度は、きわめて高い。南極の上空で、地球の生命を有害な紫外線から守るオゾン層が薄くなる「オゾンホール」を見つけたのも日本の研究者の功績だ。
新しらせは、これから1年がかりで、環境に配慮したエコ船に仕上げられる。氷海の航行性能を増すことで省エネ度を高め、航海中のごみや汚水を処理する機能も装備する。観測基地からの廃棄物の持ち帰りにも能力を発揮する。
氷雪で覆われた南極大陸は、地球を冷まし、海水や大気を循環させる機能も持っている。新旧のしらせを通じて、南極観測が果たす役割とその意味を考えたい。