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【正論】「マスコミの常識」は非常識 慶応大学教授・阿川尚之 (3/3ページ)
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基本知識にも欠ける
ただ新聞は文章が残る分、ずいぶん細かく神経を使っている。テレビは垂れ流しだから、安易な正義感や陳腐なことばで息苦しいほどだ。政府や企業に「猛省」を促し、役人や企業人の堕落を「慨嘆」する報道ステーションの某など、基本的知識の欠如、大仰な言葉や身振りばかり目立ち、見るに堪えない。横に座るジャーナリストは恥ずかしくないだろうか。
それでもお粗末なワイドショーやニュース番組が跋扈(ばっこ)するのは、視聴率さえ高ければスポンサーが大金を払うからだ。内容など気にせず、広告の効果のみを基準に番組を提供する企業の責任は重い。
むろん非常識は政官産学、どこの世界にもある。私が奉職する大学だって非常識がうようよしている。ただ、マスコミはそうした非常識を衝くのを商売にしていながら、自らの非常識を問われることが少ない。よく書かれたい報道されたいと願う企業や官庁が、マスコミ批判をじっと我慢しているのに気づかない。
私が在米日本大使館で広報担当の公使を務めたとき、「阿川は困ったものだ。我々がなにか言うと、書いちゃうから」と文句を言う特派員がいたそうだ。そう、マスコミで大っぴらに批判を受けるのは、だれしもつらい。
もちろん物書きとして、私も同様の責任を負っている。自分の書いたものが思わず人を傷つけたことが何度かある。だから一層、言論活動に携わる者は自分の常識を疑ってかからねばいけない。そう自戒する。心ある多くのジャーナリストにも気をつけてほしい。(あがわ なおゆき)

