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【産経抄】4月21日
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色鮮やかな花々が朝の光に輝いている。出勤の途中、手入れの行き届いた庭を通りかかると、気分が浮き立ってくる。「人はなぜ花を愛(め)でるのか」。こんなテーマで2年前、京都でシンポジウムが行われたことがある。
▼イラク北部の洞窟(どうくつ)では、約6万年前に埋葬されたネアンデルタール人の骨の周りに、たくさんの花粉が見つかった。当時から死者に花を手向ける習慣があったのではないか、いまも論争が続いている。一方で約1万5000年前、フランスのラスコーの洞窟に描かれた壁画の絵柄に、動物はあっても、花はない。
▼日本の縄文土器にも花を表現したものは見当たらない。地球上にきれいな花がたくさん登場するようになったのは、人が農耕を始めてからのことだという。原始林が切り開かれて、できた草地に適していたのが、花を付け種子を残す植物だったからだ。
▼人は花の色で衣服を染め、髪飾りを作った。文字や絵画の歴史が始まると、花は詩歌や物語、造形美術で表現されるようになる。花はまた、病人のお見舞いやお祝いのための贈答品としても使われてきた。
▼さまざまな分野の専門家の発表をもとに、都市文化研究者の白幡洋三郎氏は、こう推論する。群れをなして生きてきた人は、人と神、人と人との間を取り持つ「なかだち」の役割を花に期待してきたのではないか(『人はなぜ花を愛でるのか』八坂書房)。
▼全国各地で、花や木が切り取られたり、踏みつけられたりする被害があいついでいる。前橋市では地元の人たちが大切に育ててきた2000本近くのチューリップが切り落とされている。犯行の動機は想像もつかないけれど、「なかだち」を失った世の中を象徴するようないやな事件だ。